つまり、これまでは均質化が効率性を高めることに貢献してきたが、21世紀はより“個”に注目したパーソナライズ化こそがビジネスのカギを握ることになるとSchlegel氏は強調する。
「たとえばエンタメの分野ではすでに個々のユーザーに適した音楽や映画、ビデオを推奨するのが当たり前になってきている。これをたとえば教育やヘルスケアにも適用できれば、よりよい社会の実現が近くなるとも言える」(Schlegel氏)
パーソナライズ化を推進するためには、より精緻で実用的なパフォーマンス測定システムを作る必要がある。そうしたシステム構築のため、エグゼクティブ、IT部門、アナリストの3者がそれぞれ担うべき役割として、Schlegel氏はアナリティクスを軸とした作業分を示している。
- エグゼクティブ:ビジネス戦略の明示、評価指標の定義、各評価指標に対する目標の設定など「リーダーシップを駆使すべき」部分
- IT部門:データの統合、評価指標の算出、各評価指標の目標値と実績値の報告など「データの精度と整合性を徹底する」部分
- アナリスト:目標値と実績値の間の差分の分析、先行指標の特定、提案された変更によるインパクトのモデル化など「データ分析によって得られる知見を可視化する」部分
精緻化のレベルが高ければ高いほど、この3者のバランスが良い状態(予算や人材などのリソースが最適に配分されている状態)になり、現在、そして近い将来のビジネスに求められる「粒度が細かい解」(Schlegel氏)が得られ、ビジネスプロセスのパーソナライズ化が進むことになる。
この精緻なアナリティクスが成功している事例として、Schlegel氏は以下の2つの事例を挙げている。
- California ISO:米カリフォルニア州の電力事業者に対してシステムオペレーション(系統運用管理)を提供する。以前は4カ所のロケーションデータをもとに電力量の割り当てなどを行っていたが、ロケーションの数を4800に増大したことでより電力価格の可視化や停電などの危機に対するインテリジェンスが向上、より正しいバランスで電力の割り当てが実現
- Progressive Insurance:米オハイオ州メインフィールドビレッジに本拠を置く1937年創業の自動車保険の老舗企業。「優良ドライバーとそれ以外」という単純なカテゴライズから、「Snapshot」という小さなデバイスを車に取り付け、信赤信号で止まっているか、スピード規制を守っているか、といったドライバーの行動を分析、被保険者のパーソナライズ化を進め、個々の顧客に対してユニークな保険の提案を行う。顧客からも「保険のコストが大幅に抑えられる」と好評
この2つの事例を紹介したあと、Schlegel氏は「いかに粒度の細かいセグメンテーションを実施するかが非常に重要であり、市場のトップに立つためには欠かせない」と改めて強調している。