2.高いレベルの透明性を担保した顧客対応型のアナリティクス
Schlegel氏は次の段階として、顧客対応型のアナリティクスをビジネスモデルに組み込む方法として、「セルフサービス」「比較ベンチマーク」「パーソナライズされたアナリティクス」「コラボレーティブな意思決定」「信頼されるデータ集計者」の5つのケースを挙げ、以下のように図示している。
Schlegel氏は続けて「この5つのすべてを実現する必要はなく、どれか1つだけでも組み込むことができれば、アナリティクスによる新たなインパクトを生み出せる。重要なのは、顧客やパートナーといった外部のステークホルダーのニーズを迅速に具現化し、対応していくために、透明感をもたせたシステム構築を心がけること」と語り、顧客対応型アナリティクスがうまく行っている事例をいくつか紹介している。
- DakotaCare(保険):セルフサービスを活用した事例。会員や雇用者、医療関係者、保険エージェントなどそれぞれのメンバーのクレームコストを月ごとにグラフ化し、誰もがアクセスできるようにしている
- Ford(自動車):比較ベンチマークを活用した事例。1万4000社のディーラーと2万人以上のユーザーに対し、価値のあるインサイトを比較ベンチマークとして提供、数千万ドルの節約につなげたほか、リコールと誤診断に対して早期警告を提供、パフォーマンスとベストプラクティスを推進
- Opera Solutions Mobiuss(金融):パーソナライズされたアナリティクスの事例。ビッグデータアナリティクスのベンチャー企業Opera Solutionsが金融業界向けに提供する、モーゲージ証券(MBS)を含むさまざまな債権ポートフォリオのリスクや価値を表示するシステム「Mobiuss」により、ユーザーは透明化、最適化された金融情報にアクセスでき、債権が紙屑になってしまう事態を未然に防げる
- Guy Carpenter(保険):コラボレーティブな意思決定の事例。保険会社の再保険を引き受けるため、価格変動リスクに晒されている金融資産(エクスポージャー)を持つことは許されない。この保険は引き受けていいのかを判定するためにステークホルダーによる意思決定を図ることでリスクと報酬のバランスを取る
- CoreLogic(金融・不動産):信頼されるデータ集計者の事例。住宅ローンなどの金融情報や不動産情報を提供する、アナリティクスとビジネスインテリジェンスを得意とする企業。たとえば銀行などの金融機関から住宅ローンに関する情報を継続的に取得し、優れた分析モデルで延滞のリスクなどを詳細にはじき出す
3.アナリティクスは意思決定をどのように支援するのか
最後のプロセスである“意思決定の変更”について、Schlegel氏は「今や、リーダーの意思決定を支援するための専用のアナリティクスが必要とされている」と語る。従来のビジネスインテリジェンスやアナリティクスが提供できたのは、洞察(将来起こることへの予想)までだった。