三国大洋のスクラップブック

英国をいら立たせるエリック・シュミット--グーグルの税金をめぐる話

三国大洋 2013年05月28日 17時18分

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 GoogleのEric Schmidtが「今の税制を決めたのは俺たちじゃない」などと、今さらながらのことを身も蓋もない言い方で口にした(寄稿記事を書いた)ものだから、これを見聞きした英国の政治家などが猛反発……。という話を前に書いた

 今回はこの話の続きと、そして米上院調査委員会の聴聞会をかなり巧みに乗り切ったAppleのTim Cookのことを書く。

Miliband英労働党党首に叱責されたEric Schmidt

 英国では5月20日の週に入っても、Schmidtの税金についての発言をめぐる騒動が続いていたようだ。野党労働党のEd Miliband党首は22日にあった「Big Tent」と称するGoogle主催のイベントに乗り込み、「税金逃れのために、大層な手間暇をかけているGoogleは無責任」「Googleのような立派な会社がこんなこと(税金逃れ)をしていることに深く失望した」などと批判、さらに「株式公開時の目論見書に『邪悪なことはしない』と書いていたのは誰だっけ?」などと述べた上で、「資本主義とはそういうもんだ」(“just capitalism”)として自社の税金逃れをあくまで正当化しようとしたSchmidtを叱責したという。

 ここでGoogleを攻撃することは、ほぼそのまま現保守党政権への攻撃である、自らへの得点にもつながるのだろう、Milibandは下掲の動画の通り、かなり強い言葉を使ってGoogle、特に会場に姿を見せていなかったSchmidtを批難していたようだ(註1)。

[Ed Miliband criticises Google over tax avoidance - Guardian]

 このMiliband発言もあり、その後に行われたSchmidtらのセッションでは、話題が税金の問題にほぼ終始することに。このセッション、最近Schmidtが取り巻きとして連れ歩いている(北朝鮮にも一緒に行った)Jared Cohenという若者も一緒に登場していることから、二人の最新刊(『The New Digital Age』という共著)のプロモーションの目的もあったとみられるが、参加者との質疑応答では、税金の話に質問が集中(一部にプライバシーの懸念に関連する質問あり)。

 Cohenがいくらイスラム諸国などでの人権について声高に自説を主張しようと、だれも関心を示していなかったことが下掲の動画を見ても分かる(註2)。

[Google's Schmidt: Companies Don't Decide Tax Policy - Bloomberg TV]

 このSchmidtの発言やそのベースにある考えは、後述するTim Cookのそれとほとんど変わらない。けれども両者の発言に対する反応は、ほぼ正反対のものとなった。「この違いの原因は何か」というのは、なかなか興味深い事柄かもしれない。やりとりが行われた場所の違い(Appleのそれが「ホーム」の米国内で行われたのに対し、Googleのほうは「アウェイ」の英国だった)も確かに大きいはずだが、同時にこの二人の経営者の個人的な資質(もしくは性格)の違いも少なくないと思われる。

 Cookは基本的に低姿勢を通し、慎重に言葉を選びながら受け答えをし、同時に「言っておくべきこと」ははっきりと伝え、さらに(ただ現状を批判しているだけでは仕方がないと)曲がりなりにも代案を示しさえした。それに対して、Schmidtはといえば、「税制を決めるのは各国の政府であるべきで、企業ではない」「自分たちは今の各国の税制(international tax regime)に従って動いているだけ」などと、英国(をはじめとする各国)の政治家や関係者にしてみたら、身も蓋もないことをとうとうと捲し立てた。

 それだけならまだしも、さらに追い打ちをかけるように「コンピュータエンジニアなら、あんな不合理な(税金の)仕組みを設計したりはしない」など言わずもがなのことまで口にした……。「相手の立場を思いやる」 といったことのためのSchmidtのセンサーは、あまりうまく機能していないのかもしれない(註3)。

 ここで思い出したいのは、Milibandが指摘している通り、Googleが2004年の株式公開に向けて、いわゆる「デュアルクラス」の株式スキームをわざわざ用意していたこと。ざっくりいえば、2種類の株式を用意することで、どんな事態になってもLarry PageやSergey Brinといった創業者、それにSchmidtなどが自らの意思に反して経営者の座を追われることがないようにしていたわけで、(前回の記事で触れた)Rand Paul上院議員の指摘--「税金を圧縮する策があるのを知りながら、それを見過ごすような企業幹部なら、責任を問われてクビを切られているだろう」というのは、Googleの場合には当てはまらないことになる。

 つまり、Googleの経営陣には、どんなに株主から反発の声が上がろうと、自らの考えを通せる特権が今でも付与されている。

 そうしてまた、Googleが「世界のため」などと称して普段から「表現の自由」とか「人権」とかについて声高に発言している(場合によっては政府への働き掛けなどもしている)ことを考え合わせると、この税金逃れについてだけ「ほかの会社でもみんなやっていること」「おかしいのは今の税制の方で、自分たちにはその枠組みの中で『合理的』に振る舞っているだけ」というのは、明らかに「ダブルスタンダード」だろう。このイベントでの会場からの質問には、そんなSchmidtの「二枚舌」に対する聴衆の苛立ちも感じられる。

 なお、Schmidt発言をめぐる英国でのこの騒動はかなりこじれてしまったようで、Schmidtを識者の集まりに招いていた保守党政権側でも22日(Miliband発言のあった後)に、Nick Clegg副首相がわざわざ記者会見を開いて、「20日の集まりの中では、『(こんなことをしていては)長期的に見てGoogleのためにもならないと、私がSchmidtに直接クギを刺した」などと釈明していたという。

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