三国大洋のスクラップブック

英国をいら立たせるエリック・シュミット--グーグルの税金をめぐる話 - (page 2)

三国大洋

2013-05-28 17:18

米議会の大物連中を手なずけたティム・クック

 一方、米国時間21日の上院調査委員会での聴聞会を受けて、NYTimesは「ワシントンでガス抜きに成功したTim Cook」という趣旨の記事を掲載していた(註5)。

 昨年一年かけてAppleをターゲットにした「iECONOMYシリーズ」を連載していたNYTimesのことだから、どことなく皮肉半分にも聞こえなくはないが、それでも「Appleが膨大な額の税金逃れをしていると怒り狂う議員らと対峙するべく、米議会というライオンの住処(すみか)に乗り込んだTim Cook(略)彼が聴聞会を終えるころまでには、調査委員会の大物議員連中はまるで猫のように自分たちの手を舐めていた」(註6)。

 「前日の記者会見では、大層な剣幕でAppleを批判していた同委員会のCarl Levin委員長でさえ、『われわれはiPhoneやiPadが大好きだ』などと述べ、自発的に協力することにしたAppleの幹部らに、『こうした形で脚光を浴びるのは易しいことでない』などと労をねぎらった」(註7)

 

 また「Appleのことを『最大の税金逃れ(の一社)』などと批難していた共和党長老のJohn McMainも、Tim Cookの低姿勢な対応ぶりになだめられ、しまいには『あなた方は世界を変えた、それはAppleにとって信じられないほどの遺産だ』とCookにお世辞を言った……」(註8)などとあるのを見ると、Cookらの対応が相当に巧みなものだったことがうかがえる。

[Tim Cook Still Considers Apple an American Company - WSJ] (「米国の企業であることを誇らしく思う」などとするCookの証言の冒頭部分)

[Cook Not 'Bringing Money Home' at Current Tax Rate - WSJ] (「現行の課税率では国外にある資金を持ち込む計画はない」などと言い張るCook)

 先に「ホーム」と「アウェイ」の違いといった点に触れたが、NYTimesの別の記事をみると、一概に米国内だから手ぬるくなる、というわけでもないことがわかる。ここで比較に出されているのは、1998年にあったBill Gatesの議会証言で、今回のCookのそれとは「まったく対照的」(“striking contrast”)などとある(註9)。

 ただし、NYTimesはこのふたつの事例に関する大きな違い--Gatesの議会証言がMicrosoftの独禁法違反を問うものだった(違法とされる余地があった)のに対し、今回の証言では予め「Appleの行為は合法」という発表があった--などは都合良く忘れてしまったかのように、「Tim Cookは一般大衆の善意をうまく使って、議会の怒りをガス抜きした」などと褒めそやしている(註10)。

 Cookらがどれほど上手に聴聞会を乗り切ろうが、それでこの問題の抜本的解決に向けた糸口が見えたというわけではない。最大で1兆9000億ドル(註11)とも言われる米多国籍企業の国外資金は相変わらず塩漬けのまま。そして、手なずけられたはずのLevin委員長にしても、その後24日はBloomberg TVの番組に出演して「今のような、ひどい税制の抜け道は必ずふさぐ」などと言っている。

[Sen. Levin: Apple Tax Practices `Stunning']

 いずれにしても、今回の英・米での出来事が「大山鳴動してネズミ一匹」とならぬよう、来月のG8(英国) などではこの問題に関して大きな前進があることを期待したいところと感じている。

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