黒川農場の研究では、50アールのビニールハウスに日射量や湿度、土壌の水分や温度などのセンサを配置し、約120万円の投資で済むという。同農場ではまた、ZeRo.agriシステムの実証実験とともに、ICTと養液土耕栽培技術の高度化研究開発を行い、日本での養液土耕栽培技術の普及にもつなげる考えだ。
今回、研究の対象とした養液土耕栽培は、土壌に作物を栽培し、かんがい水に肥料を溶かして、水と肥料を同時に必要な量だけを供給するもので、設備投資が少なく、水耕栽培ほど厳密な管理が求められず、コストが圧倒的に安くて済むという特徴がある。日本では、経済協力開発機構(OECD)諸国平均の4倍という窒素を農地に投入しており、その50%が地下水に硝酸の形で溶脱し、環境を汚染しているという課題もある。養液土耕栽培技術では、こうした環境問題にも対応できると位置付けられている。

セカンドファクトリー プロダクト&サービス事業本部 井原亮二氏

日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏
「だが、日本では篤農家の既存技術に対する執着があり、養液土耕栽培が進んでいない。ICTで栽培管理指標を作ることができ、養液土耕栽培の普及につなげたい」(佐々木氏)
日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者(CTO)の加治佐俊一氏は「クラウドは今や社会に不可欠なものになっており、これを農業分野にも生かしていくという取り組みのひとつ。今回、基盤に活用しているWindows Azureは認証をはじめとして、エンタープライズで使われているセキュリティ機能や使い慣れている技術を活用できるのが特徴。農業分野への適用たけでなく、農業とほかの産業とを連携させた活用にも発展させることができる」と説明した。
「作業記録や生育記録をペンで記入し、クラウドに保存することでの“記録する”、受発注情報や各種情報などを“見る”、ほかの農家と情報を“共有する”といった使い方が可能になる。Windows 8であればタッチやキーボード、マウスでも利用でき、防水、防塵のデバイスも用意されている。さらにOfficeが利用でき、既存のアプリケーションとの連携も可能になるといった特徴を持っている。これまで第2次産業、第3次産業でICTの活用が進んでいるが、クラウドによって、第1次産業に対しても支援がしやすくなる中での研究への取り組みになる」(加治佐氏)