Zemlin氏の教訓は、Linus Torvalds氏をはじめとするLinuxコミュニティの開発者たちと身近に接する中で得られたものだそうだ。Linuxコミュニティは400社以上の世界の企業と何千もの個人の開発者たちによって構成されており、Linuxカーネルには毎時7回以上の変更が加えられているという。
「このような巨大なプロジェクトであるにもかかわらず、Linuxコミュニティはうまく機能しています。どうしてうまく機能するのか、その秘密が、これからお話しする教訓なのです」(Zemlin氏)
教訓1:成功を求めるな
まずZemlin氏は、この教訓を紹介するにあたり、Torvalds氏がLinuxを最初に発表した時のメールに書いた言葉「I'm not doing anything big. Just something for fun」(何かでかいことをやろうというわけじゃない。ただ楽しいからやっているんだ)を引用した。
Linuxを初めて公開したときのLinus Torvalds氏の言葉
「大きな夢を抱くと人は成功を求めます。しかしそれは実現しないかもしれません。『成功したいなら成功を求めるな。好きなことをやれ。そうすれば成功は後からついてくる』。つまりはそういうことです」(Zemlin氏)
このことを裏付けるものとして、Zemlin氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)で行われた「モチベーションは何か」を調べる研究を紹介した。その研究では、参加者を報酬額の異なる3つのグループ(大きな報酬、平均的な報酬、わずかな報酬)に分け、それぞれに単純作業とクリエイティブな作業を行わせたという。その結果は、単純作業では大きな報酬のグループが最も成果がよかったものの、クリエイティブな作業では大きな報酬のグループが最悪だったのである。
「ソフトウェアを作るのは、詩を書いたり絵を描いたりするのに似ています。人はそれが楽しいから、あるいはもっと上達したいからやるのです。ソフトウェア開発者にとってのモチベーションは、報酬金額の多寡ではありません。『自分ができることをよりうまくやりたい』ということです」(Zemlin氏)
教訓2:すべて無償で公開してしまえ
この教訓を説明するにあたり、Zemlin氏は自身が妻に出会ったときのエピソードを披露した。氏がThe Linux Foundationという非営利団体で働いていることを告げると、彼女は「どうやってお金を稼ぐの?」と非常にがっかりしたそうだ。