Amazon.comを運営する中でも、クリスマス商戦休日にはアクセスが集中するのに対し、平日はそれを大きく下回るアクセス数となるが、オンプレミスでシステムを用意する場合には、ピーク時に合わせてリソースを用意しなければならず、大きな無駄が発生していた。
プライベートクラウドはこうしたクラウドの特長を生かせないとして、「従来と同様の手間がかかるのであれば、それはクラウドコンピューティングとは呼べない」と糾弾した。
AWSのメリットを認め、利用している業界として、金融、メディア・広告、製造業、医療・バイオテクノロジを挙げた。金融は法律の規制も多く、高セキュリティを求める業界だが、日本でも東京海上日動火災保険などAWSを採用する企業が登場している。
メディアでは、日本経済新聞の電子版がAWSを採用している。日本経済新聞社の産業部編集委員である小柳建彦氏が登場し、5月31日からタブレットとスマートフォン向けウェブアプリをAWS上でリリースしたことを明らかにした。
日経電子版は2010年にiPad版のサービスを開始。当初からAWSのようなパブリッククラウドの利用を想定していたという。

日本経済新聞社 産業部編集委員 小柳建彦氏
「2010年に記者として書いた記事に引用した図表の中で、パブリッククラウド導入を躊躇する理由としてセキュリティを懸念する意見が最も多かった。これは現在、当社の経営層にも依然として残っている懸念材料。その一方で、実際にパブリッククラウドを利用している人からは、一番満足しているのがセキュリティという結果となっている」(小柳氏)
その上でAWSを利用することで、これまでかかってきた運用サポートにかかってきたリソースを開発に向けることができるようになり、提供した記事でアクセス数に変動がある新聞の特性からしても、メリットは大きいと話した。
医療・バイオテクノロジ分野では、米国のゲノム解析プロジェクトが250TバイトのデータをAmazon S3に格納している例や、東芝メディカルがこれまでフィルムで保存してきた高精細医療画像を電子化して保存するといった例が紹介された。

トヨタメディアサービス 専務取締役 藤原靖久氏
製造業では、トヨタのBtoCサービスを担当する、トヨタメディアサービスの事例が同社専務取締役の藤原靖久氏によって紹介された。藤原氏は「顧客第一主義という点が当社とAWSはよく似ている」と指摘。トヨタが進める徹底した原価低減を実現していく中で、情報システムについては同社が提供するサービスに限ってみても、システム構造が複雑、機能が重複、新規サービス開発のスピードが上がらず、原価低減も頭打ちという状況に陥っていた。