「クラウドコンピューティングによって、情報システム開発のパラダイムシフトが変わった。“作る”から“使う、組み合わせる”へと変化している。寿司店に例えると、コストを削減するために専用工場で握り寿司用、鉄火丼用といった用途別にマグロを切っても、需要予測が外れると余っているものが出る一方で、足りないものが出る。小さくスタートすることにも向かない。クラウドによって、この予測と実際の差がなくなった」(藤原氏)
2013年3月にインフラを自前導入センターからAWSに切り替えた際には、直後にレスポンスが低下。そこで一時的にサーバリソースを増やし、レスポンスを維持しながら原因を究明、原因がわかった時点でサーバリソースを減らして対応した。
「こうした使い方もオンプレミスでは不可能。課題だったコスト削減についても、移行費用も含め5年で50%削減の見通しだが、AWSでは3カ月ごとにコスト削減されているので、もっと成果が出るのではないかと考えている」(藤原氏)
こうしたこれまでの事例に加え、Vogels氏は今後の展望として東京リージョンで開始したHPC領域に言及した。「日本ですべてのサービスを提供しているわけではない。今回、日本においてもHPC領域のサービスを始める」と説明した。

Cycle ComputingのCEOを務めるJason Stowe氏
ここで、欧米でAWSとユーティリティHPCサービスを提供するCycle Computingの最高経営責任者(CEO)であるJason Stowe氏が登壇した。同社のサービスを活用することで、薬剤開発では、これまで39年かかっていた計算を1万600台のサーバを利用し、11時間、コスト4372ドルで済ませた。また、原子炉の安全性を確認するシミュレーションでは、CC2は実行時間を40%速め、5~10クラスタを同時に実行して実施している。
「われわれは生命に影響を及ぼす科学そのものを加速させるコンピューティングを提供している」(Stowe氏)
AWSが日本で新たに提供するもうひとつのサービスがビッグデータだ。2012年11月に発表されたDWHサービスのRedshiftを日本で提供する。
オンプレミスに比べ低コストで、これまで利用していたSQLベースのビジネスインテリジェンス(BI)ツールをそのまま使用しながら、クエリ性能の速度を大幅に増加できる。一般的なDWHに必要なプロビジョニングや設定、監視、バックアップ、スケーリング、データ保護などに関する作業を自動で展開できる。
Vogels氏は、「こうした新サービスに加え、トレーニングプログラムを全コース日本語で提供を始める。認定試験も実施するので、試験に受かれば認定エンジニアとしてスキルアップにもつながる」と、サービスからサポート、パートナー支援まで全方位でサービスを拡充していく姿勢を強調して、講演を締めくくった。