「若かったから」始めたトーバルズ氏--「Linuxがどこに行くのか分からない」 - (page 4)

森英幸

2013-06-07 08:00

コンピュータとOSの将来

質問者:不揮発性メモリがメインメモリになるのはいつでしょう。その時、カーネルはどう変わるのでしょうか。

Torvalds:不揮発性メモリについては、長年「あと2~3年で」という話を聞かされてきたのでちょっと懐疑的ですが、同時に「今度こそ本物かも」とも思っています。

 不揮発性メモリがメインメモリとして使えるようになると、ファイルシステムの動作が変わることになるでしょう。この35年以上、ファイルシステムはブロック単位で扱われてきましたが、メインメモリが不揮発性になったら、もっと細かな粒度、バイトアドレスで扱えるようになるでしょう。これは、大きな変革になります。ただし、そのように変わるのは非常に長い時間がかかるでしょう。

質問者:20年、30年後にOSはどう変わっているでしょう。

Torvalds:より大きくより複雑になっていると思いますが、OSの役割やコンセプトはそれほど変わっていないのではないでしょうか。現在のOSも基本的な役割は70年代からあまり変わっていません。もちろん、GUIは大きく変わりましたが、大きくなってより速くなったというだけです。

 あまり変わらないのではと考える理由は、二つあります。一つは、OSを変えるのはすべてのユーザーにとってとても苦痛なことだから。もう一つは、OSのためだけにOSを革新させるのは無意味だということです。

 当然、細かいところ、実装は大きく変わるでしょう。ですが、OSの役割は変わらないと思います。

Hohndel:「Google Glass」のような新しいデバイスはどうでしょう。いつも起動していて、いつもつながっているデバイスが、人とコンピュータの関係を大きく変える可能性はありませんか。

Torvalds:確かに変えるでしょう。小さなスクリーンがいつもそこにあるというのは、素晴らしいことです。

 ただし、私の関心はアウトプットではなく、インプットにあります。Google Glassはアウトプットデバイスとしては大きな可能性を持っていますが、インプットに向いているとは思えません。

 本当に作業するにはキーボードが必要です。私は音声入力が大嫌いですから。ソースコードの編集を音声入力でやる様は想像したくありません。

 もし、キーボードと同じくらい効率的で、より小さなデバイスが出てくれば、状況は変わるかもしれません。

Linuxの始まりと今後

質問者:なぜLinuxを始めたのでしょう。

Torvalds:若かったからです。私は若くて時間があり、そしてバカでした。それがどんなに大変な作業になるのか理解できていませんでした。

 私は本格的なOSを自分のために必要としていて、でもプロプライエタリなUNIXは高くて手が出せませんでした。

 Linuxを公開したのは、自分が作ったものを見せびらかしたい、自分を売り込みたいという思いがあったからです。ただし、私の関心はビジネスではなくコードそのものにありましたので、オープンソースにするのはごく自然なことでした。

 もし、関心を持ってくれる人がいなかったら、このプロジェクトは6カ月で終わっていたでしょう。幸い、そうではなかったので、22年間も続けられています。

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