「オープンソースにしなければ、Bill Gatesになれたかもしれないのに、後悔していませんか」と聞かれることがありますが、まったくそうは思いません。オープンソースにしなければ、Linuxは今のようにはならなかったでしょう。ですからその質問は的外れです。もともとお金のためではなく、面白いこと楽しいことをやるために始めたのですから。
Hohndel:では、最後の質問です。このセッションのテーマ、Linuxはどこに行こうとしているしているのでしょうか。
Torvalds:その質問はフェアではありませんね。プランはないと繰り返し言っているのですから(笑)。
私にはプランはありませんが、ほかの人たちには目的があって、しかもそれぞれの目的は違います。一部の人たちは小さいデバイスをより上手く動かすために、一部の人たちはガソリンポンプの制御のために、あるいは宇宙に行くためだったり、映画の貸し出しシステムのためだったり、安いハードウェアを作るためだったりします。
もちろん、そこにはLinuxが無償で自由に使えるからという理由があるでしょう。いろいろな人のいろいろな動機があるために、Linuxは面白くなっています。
営利企業が開発するOSなら、当然プランがあって、開発の方向性が決められています。ですから、その上にいろいろな人がいろいろな動機を乗せようとしても、安定したものにはならないと思います。
Linuxがどこに行くのか、私にはわかりません。しかし、自分の動機のためにLinuxの開発に参加する企業や個人の方々にはそれぞれのプランがあり、アイデアを持っています。
ですから、Linuxはこれからも進化し続けるでしょうし、いろいろな方向に動こうとするでしょう。それは一つのプランがあることよりも、ずっと興味深いことなのです。
右がDirk Hohndel氏