オフショア開発で人気急上昇のベトナム
筆者は、日本とベトナムの拠点を毎月往復しながら、システム構築やオフショア開発、情報セキュリティコンサルテーションなどを行っています。今日ベトナムが、オフショア開発や製造業の拠点として注目が高まっていることについては、大いに賛成の立場です。しかしながら、メリットの裏には、さまざまな留意すべき点も潜んでいます。
本連載では、オフショア開発で注目を浴びているベトナムのIT事情について、筆者の実体験をベースに知り得るところを情報提供していきます。今後、ベトナム企業との提携やベトナム進出を考えている方に、ベトナムの生の姿を知る一助になればうれしい限りです。
今後のオフショア開発で新たに検討している国や興味のある国(出典:IPA「IT人材白書2012」オフショア動向調査
さて、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2012」オフショア動向調査において、「今後のオフショア開発で新たに検討している国や興味のある国」でベトナムが第1位となっているほど、ベトナムに対する注目は熱いものがあります。
現在、ベトナムではIT産業を、国策のハイテク産業の一つとして推進しています。また、初任給が比較的高く、ベトナムでは人気業種であるため、優秀な人材が自然と集まる素地ができているようです。さらに、ベトナムでの一般的な評価として「ハイテク製品=日本」という図式が成り立っているため、日系IT企業との取引は、現地で受け入れられやすい状況が十分に出来上がっているといえるでしょう。
日本と同じ感覚で業務を開始できるベトナム
ベトナムとの業務を開始しようとする際、われわれのようにすでに進出済みの日系企業に業務委託する場合には、日本国内の取引と同じような感覚で業務を開始できます。しかし、新たにベトナム企業候補先を選定しようとする場合には、何らかの現地機関に頼るのが現実的です。
ベトナムにおいては、ベトナム全土の業界団体である「ベトナムソフトウェア協会(VINASA)」や、ホーチミン市での業界団体である「ホーチミン市コンピュータ協会(HOA)」といった団体があります。どちらの団体も、日本からの仕事の受注は最優先事項の1つであるため、日本からの問い合わせに対しても親切に答えてくれる機関です。英語でのやり取りが主ですが、これらの機関を活用することがいいでしょう。
ベトナムのIT企業の中には、社長が元日本留学生で流ちょうな日本語を話し、かつ、日本との取引にも慣れている企業も多くあります。また、日本企業が品質や秘密保持に厳しいことを熟知し、能力成熟度モデル統合(Capability Maturity Model Integration:CMMI)や情報セキュリティ管理システム(ISMS)の取得といった活動に積極的な企業も少なくありません。