日本人と似ているがゆえの落とし穴
ベトナム人は日本でよく言われる通り、アジア人の中でも日本人と似ている民族であると筆者も感じています。親しくなると世話好きで、少しお節介。食事をすれば、日本人の口に合うものばかり。友人宅に遊びに行っても、まるで夏休みに田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに来たかのような居心地。といったことをベトナムで経験すると、「まるで一昔前の日本のよう。ベトナム人とならばうまくやれる」と感じることでしょう。
そのため、日本という国や日本語に通じているベトナム人がビジネスパートナーである場合には、不慣れで面倒な国際的な管理業務などを次々にベトナム人へ移管したくなってくるものです。ある意味仕方がないことかもしれません。
ただ、このような状況は「要注意」です。日本側での仕事が増えることをいとわずに、「業務フローをもう一度振り返る機会」ととらえて、仕事のやり方を再考した方が良いようです。
カネが絡むと人が変わる
ベトナム人は「カネが絡むと人が変わる」と驚く人もいるほど、仕事上の損得勘定を冷静にみています。日本人の悪い面である「なあなあ」での仕事の進め方や、「このくらいは大丈夫だろう」「彼なら大丈夫だろう」という根拠のない楽観的な推測では、いつ足をすくわれても文句は言えません。
ベトナムでは、この延長線上として、「現地の店舗を乗っ取られた」「会社の多額のお金が消えてしまった」といった日系企業が被害を受けた話は枚挙にいとまがありません。ここまで物騒な話にならずとも、システム管理や情報セキュリティ管理上の基本である「進捗管理」や「品質管理」が不十分といったケースは、しばしば起こりえます。
日本国内での発注に置き換えて考えても、十分なシステム管理や情報セキュリティ管理を行わずに出来上がった成果物は、当初予定していたものとは似て非なるものとなることは容易に想像がつきます。日本人同士であっても、このような事態となるのであれば、いくら日本人と民族性が似ているとはいえ、文化も風習も異なるベトナム人との間でどうなるかは、火を見るよりも明らかです。