(Jony Iveにも強い影響を与えたとされる工業デザイナー、Dieter Ramsへのインタビュー。Jony Iveは物理的な制約の少ないソフトウェアの領域で、Ramsの作品を超えるような何かを作り出さなくてはならない・・・・・・おそらくそんな「暗黙の期待感」がすでにあるはずだと私には思える)
Jony Iveの手がけた製品(ハードウェア)と言えば、もう何年も前から「ストイック」という形容詞が真っ先に思い浮かぶようなものが続いてきている。MacBookやiMacでもあるいはiPhoneやiPadでも、「もうこれ以上削るところなど無いのではないか」と思えても、さらに薄い、あるいは軽いものを生み出し続けてきた。一部には「ユーザーによる修理のための分解・部品交換もままならないものをつくってけしからん」という批判もあるほど(註8)。色使いにしても然りで、白と黒、それにメタルシルバーという「3色使い」がずっと基本になっている(意図的にカラーバリエーションを持たせたiPod touchのような例外もあるにしても)。
そういう無駄をそぎ落としたデザインに慣れてしまった身からすると、いまのiOS 7にみられるたいへんカラフルな、文字通り「いろいろな色で満たされた」表面の意匠というのはいささか意外なものでもあった。「善し悪し」とか「好き嫌い」とかとはまったく別のところで、そんな意外性を感じた。
むろん、その昔カラフルなiMac(CRTモニター内蔵)をデザインしていたのもIveだから、「たまにはこういう(派手な)選択肢もあるのか・・・・・・」くらいに思って、そのまま疑問を棚上げしていたのだが、このTNW記事を読んで改めて思ったのは、iOS 7の(少なくとも今の)デザインが「Jony Iveの作品」とは言いがたいのではないかということ、そしてTNWの聞いた話がほんとうであるとすれば、そういう(分散型?の)デザインプロセスから生まれたiOS 7のデザインに「スティーブ・ジョブズが生きていれば、果たしてOKを出したか」といったことである。
どちらも結論のない、あるいは結論を出す必要もない問いという自覚もあるので、ここでは無用な詮索はしない。その代わりに、といってはなんだが、このTNW記事の中にもうひとつ興味深い指摘があるので、ここではそれを紹介して話を締めくくることにする。
TNWが関係者から聞いた話によると、iOS 7はいまもなお開発作業の真っ最中であり、WWDCの基調講演で披露されたのは「製作途中の作品」("work in progress")で、特に表面的な部分--アイコンや他の視覚的な部分についてはかなり流動的な状態だという。
今回の発表をきっかけに得られた外部からのさまざまな反応を踏まえて、iOS 7開発陣が正式リリースまでの限られた時間の中で、今後どこまで大幅な変更を加えてくるのか(あるいは、加えてこないのか)。
そして、全般に(他のモバイルOSに対する)「キャッチアップ」といわれることの多いiOS 7(註10)のさらに先に、Iveがそれこそ「Form follows function」を体現したような新しいインタラクションの形を生み出すことができるのか・・・・・・またひとつ楽しみなことが増えたと言えるかもしれない。
[Jonathan Ive talks about Mac design] (素材の選定や製造工程にこれだけ強いこだわり、あるいは深い思考があるIveが、ソフトウェアの領域でどんなものを生み出せるのか)