NSAスキャンダルが持つ真の意味とは?--事件報道に見られるジャーナリズムの崩壊 - (page 2)

Ed Bott (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2013-06-21 07:30

 翌朝、奇妙なことが起こった。記事が当初のものとはまったく異なった内容となり、その分量も倍近くに増え、見出しも若干改変されていたのだ。その新たな記事は大幅な追記がなされたというだけではなかった。重要な詳細が削除され、それについての告知もなされていない。変更後の記事はタイムスタンプが6月7日午前8時51分となっており、元の記事にあった衝撃的な内容もトーンダウンされていた。

 極めて重大なのは、「承知のうえで参加していた」という表現とともに、同プログラムが「機密」であるとされていた部分も削除されていたという点だ。さらに最初の段落にあった、NSAは「ある人物の行動や連絡先情報の長期的な追跡」が可能であるという下りも、単なる「外国人ターゲットの追跡」という表現に置き換えられている。

 以下は、元々の記事における核心となる段落である。

 PRISMプログラムに承知のうえで参加していたIT企業には、シリコンバレーにおける大手企業のほとんどが含まれている。これらの企業は「Microsoftと米Yahoo、Google、Facebook、Paltalk、AOL、Skype、YouTube、Apple」であり、同プログラムへの参加順に、その社名がロゴとともに挙げられている。Paltalkは大手企業ではないものの、アラブ世界で起きた民主化運動「アラブの春」の最中や、今なお続いているシリア内戦における大量のトラフィックを取り扱ってきている。

 次に、翌日に大きく編集された記事の同じ段落を見てみることにしよう。The Washington Postの編集者が大量の原稿を追加したため、この段落はオンライン版で4ページからなる記事の2ページ目に繰り下げられている。

 この文書においてPRISMプログラムの実行に不可欠とされたIT企業には、シリコンバレーにおける大手企業のほとんどが含まれている。これらの企業は「Microsoftと米Yahoo、Google、Facebook、Paltalk、AOL、Skype、YouTube、Apple」であり、同プログラムへの参加順に、その社名がロゴとともに挙げられている。Paltalkは大手企業ではないものの、アラブ世界で起きた民主化運動「アラブの春」の最中や、今なお続いているシリア内戦において、諜報上の価値が高いトラフィックを取り扱ってきている。

 筆者は元の記事のコピーを保存していたため、「Microsoft Word」の「文書の比較」機能を用いて編集前後の記事を比較してみた。自分の目で確かめてみたい方は、ここに保存されている文書内で赤色の下線や取消線が引かれた部分に目を通してほしい。

 筆者とは別に、米CNETのDeclan McCullagh記者もThe Washington Postの記事を検証している。その結果、彼はこの報道が誤っているとの結論に達している。

 7日、このデータ収集手続きに関して詳しい元政府関係者から匿名を条件に話を聞いたところ、今回の報道は不正確なものであり、リークされたPowerPointドキュメントの読み違えに基づいて執筆されているようだという。

 この元政府関係者は「これはThe Washington PostやThe Guardianの大スクープとして語られるものではない」と述べるとともに「どれも本当のことではない。これは企業に対して求められている、厳格に策定された法的プロセスでしかない」と述べている。

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