データはビジネス資産かIT資産か--日本と欧米で異なる考え方 - (page 2)

大川淳

2013-06-24 07:30

--銀行は、どうすれば競争優位を保てるか。

 銀行は常に規制に対応しないと罰則を受けなくてはならなくなる。罰金が科せられ、業務ができなくなる。売り上げの点でもこの分野は競争が激しい。なにしろ銀行は顧客を維持していくことが難しくなってきている。例えば、顧客1人に対して銀行が提供している商品は2.8個が平均だ。しかし、実際に銀行が用意している金融商品は平均で8個であり、その差は大きい。

 商品の種類は多くてもそれほどは利用されていない。銀行はシェアを拡大したいと望んでいるが、事業横断的に、ある顧客がどの担当者の、どのような顧客なのかを正しく識別できていないのが今の銀行の悩みだ。そのため、商品やサービスを(それを望んでいるような顧客に)適正に投入できていない。結果として、顧客を競合企業などに取られてしまうことになる。

--課題解消に向け、Informaticaは何を提案しているのか。

 銀行も保険も、顧客に対するシングルビューを望んでいる。だが、銀行であれ、保険であれ、事業ごとに顧客情報は別々に分断され、オペレーションごとに管理されていたのが実情だ。Informaticaは、そのあたりのデータ管理を支援している。当社の技術による顧客へのシングルビューは、富裕層対策などに利用している銀行もある。全世界の、ファイナンシャルアドバイザー約1万5000人に対して、情報が閲覧できる手法などを提供している。

 そのほかの領域で言うと、売上増加、リスク管理、コスト削減などの課題がある。今の時代、利益幅を確保、または上昇させるためにはコストを下げるしかない。ここでITを生かしできることは、例えばデータアーカイブの分野で、アプリケーション、ソフトウェアへの投資を抑制させることだ。2012年、当社の顧客は業種別で言うと金融サービスが最多だ。全世界で金融、保険、資本市場で770社となる。日本の顧客もたいへん重要だ。データ統合、データ品質管理、マスタデータ管理では第三者機関からも高く評価されている。

--実際、どのようなソリューションを適用しているのか。

 リスク管理、コンプライアンスについて、30行の銀行を対象に調査した結果、データ品質に問題ありとしたのは46%だった。取引相手のデータの正確性が7割を下回るとしたのは79%に上った。ここで、当社ができるのは、まず組織内外のデータを取り込み、当事者を特定、企業同士の関係性を明確にすることだ。実態としての位置づけを確認し、マスタデータ管理を整え、マスタデータができたら、銀行にそれを提供する。提示される情報はダッシュボードでみることができる。

 資産規模によって、証券金融商品がどうなっているか、取引相手の属性、地理的な位置などがわかる。本体と子会社の関係も、わかりやすく示すことが可能だ。証券金融商品と取引相手、それぞれ相互間の関係性などを参照できる。

--銀行は、これまで、データ管理でどんな取り組みをしてきたのか。

 各システム内の複数の顧客情報を、銀行は持っている。顧客のシングルビューを望む彼らのさまざまなアプローチがみられた。トランザクションシステムで管理する銀行はよくあった。だが、リテール銀行ならば、ある部署の状況は見えても、ほかの部署のことは分からないなど限界があった。

 1990年代以降、DWH(データウェアハウス)の人気が出てきたが、セールス、サポートの部隊では使われていなかった。そこで、CRM(顧客情報管理システム)への投資が増えSalesforce.comが台頭した。営業部門には、CRMデータがもたらされたが、ほかのシステムにリンクバックできなかったなど、いくつもの制約があった。

--MDM(マスタデータ管理)はどのように利用するものとして考えているか。

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