日米で大きく異なる、データについての考え方
--ITへの見解で、日本と外国との差異は何か。
日本と、北米や欧州と比較して、大きく異なると思われる点がある。それは、データを管理する機能が依然としてITの領域に属するものであると考えられていることだ。彼の地では、最高リスク責任者(Chiet Risk Officer:CRO)や最高データ責任者(Chief Data Officer:CDO)がいる。これらの役職は最高経営責任者(CEO)の部下として位置付けられている。CEOが管掌している領域は、いわばデータ統治だ。
これが欧米では増えてきているのだが、アジアではこのような構図はあまり見られない。データ統治はITの分野という位置付けになっている。最高情報責任者(CIO)は開発やシステムの監視をしていて、IT部門にいる。米国では技術投資の大半はデータ管理、データ統合などに回り、ビジネス側の投資予算から充当される。つまりCIOの持ち場ではない。日本ではビジネスサイドの方は質の高い情報を求めているが、データ管理は自分たちの担当ではないと考えている。
--日本ではデータ管理の発想自体が進展していないのか。
日本のある企業は米国に子会社を持っているが、米国ではIT、データについての考えや環境が成熟しているので、その子会社の方がデータ統治が上手といった例もある。同様に米国の場合、データ管理のソフトウェアを購入する際にはデータ管理の担当部門が関与するのであり、IT部門は特に動かない。だが日本ではIT部門がそういう判断をしている。
欧米では規制当局が金融機関に強制的に指導しているため、データ統治は一般的になっている。だが、アジアでは政府、当局者はまだ規制の態勢は十分に整備していないようだ。
--日本では、どのように対応していくのか。
当社のようなベンダーは欧米でソフトウェアを提案する際、ビジネスサイドの人々と話をする。欧米においてデータはビジネス資産と見られているのに、アジアでは技術領域の要素とされている。この状況は多少は変わっていているようだが、まだそれほどでもない。今後、日本市場ではデータ管理、データ統治のやり方をどのように決定していけばいいのかという点で、企業によく理解してもらえるように当社は支援していける。それができる専門家もそろえている。
--今後の取り組みの方向性は。
欧米でITはコストセンターとみなされている。しかし、われわれはITをコストとして見られたくはない。「価値を提示する企業」として見てほしい。ビジネスサイドの求めるものを見極め、彼らの真の需要を把握すれば、価値の提案をうまく位置付けられる。ITの側面で支援すれば、ビジネスにとってITが大変有益だということも理解してもらえるはずだ。