特に、SNSなどによる「見ず知らずの人」との接点の増加は著しく、特定の知り合いとコミュニケーションすることより、趣味、仕事、友達の友達などの不特定の人とコミュニケーションするケースが増加してきた。
前提条件が崩れるとフリーミアムモデルは崩壊する可能性も
では、今後の一般消費者のコミュニケーションはどのように変化していくのか。その前に、現在のコミュニケーション市場における課題を挙げたい。
- データ通信料金は月額定額料金となっているが、これを前提としたサービス、アプリケーションとなっていること
- 「フリーミアム」モデルにおける個人情報(アドレス、検索、閲覧、コミュニケーション、場所の履歴など)の収集とパーミッション(許可)
- コミュニケーションツール・サービス依存による疲れ、ブラックボックス化
1.に関しては、FTTHや3Gなどのアクセスサービスは月額定額料金が主流となっているが、LTE導入をきっかけに、段階的な月額定額料金制にシフトする流れとなっている。特に、移動体サービスにおいては、動画コンテンツなど大量のトラフィックが発生するアプリケーション利用が増えたことで、通信事業者の設備負担はかなり大きくなっている。
現在は、「利用公平性」の観点から、事業者は大量のトラフィックを利用するユーザーへの課金強化を実施するとともに、国レベルでは、コンテンツプロバイダー(特にフリーミアムモデルのプロバイダー)に対する「接続トラフィック」への課金が検討され始めている。これら「フリーライダー」(編注:実質的に自らのビジネスに利用している通信基盤に対価を支払っていないプレーヤー)については、以前からも問題として指摘されているが、市場全体の収益配分や費用負担の公平性の観点から、接続料金の精算との事態となれば、フリーミアムモデルの崩壊を招きかねない事態となる。
2.については、現在、スマートフォンやタブレットを中心として、Google PlayやApp Storeなどからダウンロードして(コミュニケーション)アプリを利用するケースが増えている。こうしたアプリにおいては、サービスの無料利用を前提に、広告の掲示、端末内の(個人)情報の利用に対する利用許諾(パーミッション)が求められることが多い。
しかし、一般ユーザーにとって、数ページにもわたる利用規約を読ませたり、内容についてのリスクを判断させたりすることは、現実的ではないケースが多い。また、多くの場合、ユーザー側に不利な内容に関するパーミッションを要求するケースが多くなっている。事業者側はこうしたパーミッションを盾にリスクを回避しつつ、悪意のある事業者は個人情報を悪用することとなる。
PCと比較してスマートフォンは個人情報の塊であり、何かあった場合の被害は甚大である。その意味では、ユーザー自身のセキュリティに対する高い意識と、国家レベルでの明確な指針が求められるところである。
3.に関しては、コミュニケーションツールが個人化することにより、いつでも、どこでも、だれとでも連絡が取れる状況になった。しかし、図にもあるように、コミュニケーションツールやサービスに費やす時間が大幅に増加することとなり、さまざまな問題を引き起こしているのも事実である。
スマホ依存、即レスへの切迫感、端末を持たない、サービスが使えないことによる差別、コミュニケーションのブラックボックス化など、さまざまな疲弊感が生じているのではなかろうか。