サービスは企業ブランドに直結
前出のWertkin氏は、製品のサービス化で重要なのは、収集したデータの活用手法であると説く。それは単に次期製品のバージョンアップに役立てるだけでなく、「いつ、どこで、どのような使われ方をされ、どのくらいのサイクルで修理が必要で、そのためにはどのような情報を提供すべきか」といった分析まで行い、顧客との関係を長期的に築くことが大切であるというのだ。
このために必要なのは、業務プロセスの中核にサービス部門を組み込み、プロフィットセンターとして成長させるビジネスモデルを構築することである。
こうしたアプローチは、先進的なグローバル企業で取り入れられている。今回のコンファレンスの一環として開催された「PTC Live Service Exchange 2013」では、ユーザー企業のサービス部門における取り組みが紹介された。

Renaultでアフターセールス・エンジニアリング部門副社長を務めるSebastien Samuel氏
例えばフランスの自動車メーカーRenaultは、販売店やメディアでのセールスプロモーションから、カスタマーサポート、修理、買い換えに至るまでのサービスを、一貫した形で提供することを心掛けているという。
同社でアフターセールスエンジニアリング部門副社長を務めるSebastien Samuel氏は、「自動車の価格には、ドライブすることで得られる体験やインターネットを利用した情報提供といったアフターサービスも含まれる」と語る。
同社は一部のモデルにAndroid搭載の情報端末を組み込んでいる。カーナビゲーションシステムとしての機能はもちろん、走行情報などを収集し、メンテナンスや部品交換の時期予測などを行って、ベストなタイミングで顧客に情報を提供する役割も担う。

Android搭載の情報端末を組み込んだ「R-Link」
Samuel氏は、「こうしたサービスを実現するためには、IT部門とサービス部門の連携が不可欠だ。一貫性のあるサービスを提供することがブランド力を、ひいては企業価値を高めることにつながる」と語る。
実際、コンシューマー向けビジネスを主とする企業は、サービスを製品差別化戦略の一環としてとらえ、業務プロセス改革を行う傾向が強いようだ。
スウェーデンの家電メーカー、EletctroluxでEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域担当アフターマーケット&カスタマーケア責任者を務めるBill McCoy氏は、「最近の調査によると、顧客は製品に問題があっても、それを企業に伝えるのは全体の2%という結果が出ている。98%は不満を抱えたままにしており、われわれにその声は届かない。サービス部門は顧客の声を社内組織に持ち込んで、利益を生み出す情報として流通、共有させることが重要だ」と語る。