三国大洋のスクラップブック

ブーズ・アレンの「マッチポンプ」--米NSAスキャンダルの落ち穂拾い - (page 2)

三国大洋 2013年07月03日 06時00分

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不可欠の存在となった「影のスパイ帝国」

 2001年の同時多発テロで寝首をかかれた格好の米政府が、その後民間の力を借りながら急いで態勢を整えようとした結果が、現在の状況につながった……。

 上述のBW記事にはそんな説明も出ている。この記事の冒頭には、Booz Allenと米政府との付き合いが日米開戦の前年1940年にまでさかのぼる、といったティップス――その時の案件は「ナチスのUボートをいかに封じ込めるか」というもので、Booz AllenはUボートで使われていた無線信号を探知するシステムの開発や、発見後の攻撃戦略の立案などに携わっていたという――もあって興味深いが、こうした「諜報活動のアウトソーシング」が進んだ結果、現在では関連予算の約7割が民間企業に流れており、また政府で諜報関連の活動に従事する人間の約2割を、Booz Allenのような企業らの派遣要員が占めているという(註9)。

 Booz Allenの2012年の売り上げが57億6000万ドル(純利益が2億1900万ドル)で、その99%が官需(連邦政府の仕事)、中でも諜報関係の売り上げは12億ドルに上ったというのは以前の話の中でも書いたが、このBW記事にはBooz Allenらが請け負う外注仕事が主に3種類に分類されるという一節がある。

 具体的には、要求されるスキルが最も低い清掃員などの職種(さすがに諜報機関だけあって、くずかごを片付けるような仕事でも身元調査をクリアした人間しかできないことになっているらしい)、システムの構築や運用・監視などに携わる一般の専門職(システム管理者や通訳、取調官などの仕事)がここに含まれ、内部告発したSnowdenの仕事もここに分類されていた、そして最も専門度が高いコンサルティング職――ここには、例えばアルカイダを倒すための戦略立案から、ソフトウェアシステムの設計、そして高官が喋るスピーチの原稿書きなども含まれ、Booz Allenが主に力を入れていたビジネスもこの3番目の仕事(の受注)、などといった記述がある(註10)。

 システム開発のように人手が必要な期間の決まっている仕事などについては、外部の業者を使ったほうが無駄が少ない(連邦政府で専門要員を抱えて給与を払い続ける必要がない)場合もあるが、この値付けがかなりお手盛りになっているようなケースもあり、例えば同じ内容の仕事でも政府で直接雇用すると年間1人あたり12万5000ドルで済むような仕事が、外注に出すと20万ドルを超えるケースも少なくないといった説明がある(註11)。

 またシステム開発についても、国土安全保障省(U.S. Department of Homeland Security:DHS)が進めた、あるプロジェクトでは、当初200万ドルとされていた開発費が3年後の完了時には1億2400万ドル(62倍)に膨れ上がっていたとか、あるいは所用期間26カ月、当初予算2億8000万ドルでスタートしたNSAの「Trailblazer」というプロジェクト――中味はNSAが収集した通話やウェブトラフィックのデータを分類・解析するためのシステムづくり――では開始から4年経ってもシステムが完成せず、結局プロジェクトが打ち切りになった上に、この無駄遣いを批難したNSAの職員がクビを切られたり、その事実を報道機関に漏らした業者の幹部が法律違反の疑いで訴えられたりした例もあったという(註12)。

 「世界で最も儲かっているスパイ組織」というBW記事の見出し、そしてこの号の表紙中央に浮かんだ「影の帝国 - 米国のためにスパイの仕事をする企業」というフレーズ(註13)が示すように、このBW記事からは、Booz Allenに諜報関連の仕事で計画立案から実行まで、ほぼすべてを丸受けできそうな能力があることが伝わってくるが、実際にそんな丸投げのようなかたちで諜報機関を造った国もすでにあるという。上述のNYTimes記事では、アラブ首長国連邦がBooz Allenの力を借りながら米NSAをお手本に諜報機関をつくったという話が出ており、「データマイニング、ウェブの監視、あらゆる種類のデジタル情報収集など、すべて彼ら(Booz Allen)が教えてくれる」という関係者(アラブのさる国の役人、としか書かれていない)のコメントが引用されている(註14)。

 さて。NSA関連ではこのほかに、ユタ州に現在建設中(今年9月に稼働開始予定)の巨大データセンターは「ヨッタバイト(yottabyte)級」のデータ収容能力を持つ施設になるという。「ヨッタバイト」という単位を目にしたのはこれが初めてだが、CNETに説明によると「1,000,000,000,000,000 GB」に当たるそうだ(註15)――の計画を詳しく取り上げたWIREDの記事(2012年4月号特集記事:註16)や、NSAでの技術開発に関する話を扱った別のBW記事――「PRISM」プログラムのシステムに関連して、HadoopやMapReduceといった名前も出てくる(註17)――なども興味深かったが、これらについてはまた別の機会に、ということで。

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