統制から開放へ、転換期の到来
情報システム部門のみを責めるのは酷な話だ。それは企業における内部統制方針が反映されたものだからだ。しかし、この行き過ぎた統制志向は、今、転換期を迎えようとしている。世界の主要組織のリーダー1709人を対象にした「IBM Global CEO Study 2012」によると、好業績企業の最高情報責任者(CEO)ほど統制志向から開放志向に軸足を移していることがわかったのだ。

CEOは管理から開放へ(出典 : IBM Global CEO Study 2012)
CEOは法遵守や無駄排除などの組織統制はすでに十分なレベルにあり、これからはオープン化を加速させて社員間のコラボレーションを高める必要性があると感じている。特に高業績企業は低業績企業と比べて、オープン化の意向が30%ほど高い。管理から開放へ、コンプライアンスからコラボレーションへ。経営方針の転換に従い、情報システムに求められる役割はこれから大きくシフトするはずだ。
組織のオープン化は社員のモラル向上につながり、創造性やイノベーション、顧客満足の向上につながる。一方で、厳格なコントロールが困難になるため、目的意識と価値観の共有が必要となってゆく。そのために、CEOは「ルールブック」を「全社員が共感できる価値観」に置き換えようと考えている。
「私たちは『労働者』を雇おうと思っていた。ところが、やってきたのは『人間』だった。仕事は個人の価値を表現するものになりつつある。ソーシャルメディアの普及がそれを促進している」 (Arkadi Kuhlmann -- Founder, ING Direct USA)
IBM調査レポート内で紹介されていた金融トップのコメントが、これからの組織のあり方を示唆している。
今、高業績のCEOが目指しているのは、価値観を共有した社員が、オープンでフラットな組織の中で、全社横断的にアイデアを共有しながら、解決策や製品サービス、新規事業などを創出する組織像だ。そのためには同時に三つのアプローチをすすめる必要がある。ひとつは「共有する価値観」を浸透させること。次に「オープンでフラットな組織」に再編すること、最後に「社内交流を促進するコラボレーション・プラットフォーム」を構築することだ。
ただし、これら三つの施策は相互に深く関連しており、各部門が緊密に連携しながらすすめる必要がある。情報システム部門はもとより、経営企画部門、人事部門が中心となり、全社員を巻き込んだムーブメントとすべきなのだ。今までのように各部門が施策を掲げて独自に推進しても、労多くして功少なしに終わる可能性が大きいだろう。