日立製作所は7月11日、ミドルウェアやクラウドプラットフォームを紹介する「Hitachi Platform Solutions World 2013」を開催した。日立は2015年度に世界のメジャープレイヤーになることを目指すとして「3つのG(Global、Growth、Group)」を掲げている。具体的には、「グローバルなマーケットにおいてグループで成長する」ために、スマート、クラウド、ビッグデータ、セキュリティの4つの分野に注力し、社会インフラや社会イノベーション事業で世界の顧客の要望に応えていく考えだ。
基調講演は、新規事業領域で日立と連携しているZiba Director of Strategyの濱口秀司氏が務めた。濱口氏の専門はコンセプト作りや戦略立案など。講演では「イノベーションの起こし方」を解説した。講演冒頭、濱口氏は「イノベーションという言葉の定義は人によって異なるが、性質として、(ビジネスマンが)見たり聞いたりしたことがないようなこと、実行可能であること、賛否両論があることが挙げられる」(濱口氏)とイノベーションについて説明した。イノベーションを起こすために必要なことは「先入観(バイアス)を持たず、パラダイムを変えること」だという。一見当たり前のように聞こえるが、限られた時間の中で効率性が要求される中、先入観を壊すのが難しい場面は起こり得る。
そこで濱口氏は「現在のビジネスを構造的に(図や絵にして)考える」ことが大事だと指摘した。これは、視覚的に分かるような、グラフや構造で考えないと「壊すポイント」が分からないからだ。先入観を「ビジネス」「顧客」「技術」という切り口で丁寧に壊し、通常では機能しそうにない条件――自動車会社であれば「京都限定」でスピードの「遅い」車を開発する場合を考えるなど――を入れて強制的に発想する。 そのように先入観を排除することを意識しながらブレインストーミングを繰り返し、アイデアそのものではなく、「アイデアが出る際の思考パターン」に着目する。これにより、その組織が持つ思考の構造が明らかになり、企業がとらわているバイアスを発見しやすくなるため、イノベーションに近づくことができるという。
日立 情報・通信システム社のサービス部門 CEO 塩塚啓一氏
続いての講演では、情報・通信システム社のサービス部門で最高情報責任者(CEO)を務める塩塚啓一氏が、日立の新たなビジネスチャンス獲得について話した。塩塚氏は、この半年ほどで円安が進んだことに触れ、ビジネス環境が急激に変化していることを説明。変化のスピードアップが激しい中、顧客が必要としているのは「新規ビジネスの立ち上げ速度」「グローバル展開」だとしている。
これらを実現するために、ITインフラの分野でパラダイムシフトが起きていると指摘する。その例として、クラウドサービスの市場規模が2ケタ成長を続けているデータを紹介した。「オンプレミスで企業ごとに構築していたプラットフォームがネットワーク経由で構築できるようになり、拠点間で同じシステムを共有できるようになった。これによりITに期待されることがコスト削減から事業拡大に変わった」(塩塚氏)。今後は日立が持つプライべートクラウド構築技術や、パブリッククラウドを提供している――AWS(Amazon Web Services)、Windows Azure、Salesforce.comといったメガプレイヤーとの展開を加速させ、顧客の求めるスピードの実現や、グローバル展開に寄与したいとした。
この例として、塩塚氏は日立が英国に提供した鉄道の事例を紹介した。以前より、鉄道の保守サービスは「一定の時間ですべての部品を」「発生した故障に対して」行われていた。現在は車両上に設置したセンサからリアルタイムに故障の有無に関する情報を取得し、部品の状況を監視しながら管理システムと連携している。これにより、これまでの保守サービスは「予防保守」ともいうべきビジネスに転換し、コスト削減などを実現できるという。
塩塚氏は、顧客ニーズに応えるべく自社内でクラウドでシステムを構築し、ノウハウを顧客に還元すると宣言した。「顧客の事業創生をワンストップで支えたい」(同氏)。日立はこれまで幅広い分野でシステムを構築してきた経験を生かしていく考えだ。