まずは実態の把握を
だが、IT部門はここに来て「意識を拡大すべき」と舘野氏は提唱する。基幹系システムの効率化、業務プロセスの可視化などはこれまでもやって来たが、さらに情報系分野での「コミュニケーションやコラボレーションといった部分でも情報がどのようなプロセスで流通しているのかも可視化すべき」と舘野氏は主張する。
少子高齢化を大前提にワークスタイルを変革することで、企業は生産性を向上させなければならない。そのためには、情報系システムでのコミュニケーションやコラボレーションでの効率化が求められている。IT部門は、そうした範囲でも貢献できるはずだ。これまでの基幹系システムを安定的に運用させるといったことに加えて、そうした貢献方法もあっていいはずだ。
それでは、シャドーITによるリスクをどのように抑えていけばいいのだろうか? 2005年の個人情報保護法の完全施行時にノートPCの外部持ち出しを禁止したように、社内ルールでシャドーITを禁止すべきなのだろうか? この方策を舘野氏は否定する。
「IT部門がシャドーITを禁止しています、と言っても、シャドーITを実際に防ぐためにどんなことを実行しているのか問われることになる。そもそも、禁止するというルールが実態にあっているものかどうか、業務の実態を反映しているものかどうかを考える必要がある」
シャドーITのリスクを低くするために、社外のクラウドサービス利用禁止、私物端末の業務利用禁止とした方策を立てたとしても、エンドユーザーは黙って使うだけだ。つまりは、闇に隠れてしまうだけだ。「禁止すれば済むという問題ではない。一律に禁止というのは思考停止であり、問題の本質を永遠に解決することはできない」
ここで舘野氏は「まずは実態を把握する必要がある」と提言する。ファイル共有などで社外のパブリッククラウドでどの程度使っているのかを知るべきだという。「社外のITを使わざるを得なかった理由を把握すべき」。そうした実態を把握してから、シャドーITをどのように抑えるか、ルールを構築すべきだと提言している。
ファイル共有にしても、企業向けにより安心できるパブリッククラウドのサービスも提供されているし、データの暗号化機能も提供されている。IT部門として「これだったら使ってもいいよという代替案を用意すべき」だ。個人向けに提供されているパブリッククラウドサービスの活用を禁止する代わりに、代替案を示して「安全な方向に導く」べきだと舘野氏は提唱する。
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