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統制がきかない時代のリーダー像--鍵を握る「オープンリーダーシップ」 - (page 2)

斉藤徹(ループス・コミュニケーションズ)

2013-07-23 12:19

 業績見通しも甘かった。1998年には秋草直之氏が社長として就任したが、業績の下方修正を連発して「株式市場を甘くみているのでは」と市場関係者を落胆させた。そんな中、2001年10月、東洋経済に掲載されたインタビュー記事での社長発言が大きな注目を集めることとなった。

 記者「就任以来ずっと下方修正が続いている。社長の責任をどう考えるのか」

 社長「くだらない質問だ。従業員が働かないからいけない。毎年、事業計画を立て、その通りやりますといって、やらないからおかしなことになる。計画を達成できなければビジネスユニットのトップを代えれば良い。それが成果主義というものだ」

 記者「従業員がやらないから、といえばそうだが、まとめた責任は社長にあるのではないか」

 社長「株主に対してはお金を預かり運営しているという責任があるが、従業員に対して責任はない。やれといって、(社長は従業員に)命令する。経営とはそういうものだ」

 この問答に同氏の経営姿勢が集約されていた。社長は株主のお金を増やすために存在し、社員は社長の命令に忠実に従うために存在する。経営陣の設定した目標は常に正しい。それを実現できないのは社員の責任だ。閉ざされた役員室からの風景であり、中央統制の問題点が凝縮された発言とも言えるだろう。

 ITバブルの崩壊とも相まって、富士通の誇る野武士軍団は疲弊していった。2002年3月期は3825億円の大幅赤字、2003年3月期も1220億円の赤字。同社初の営業赤字だ。それも二期連続の大規模損失を計上し、注目を集めた成果主義も大幅な修正を余儀なくされた。今から約10年前の出来事だった。

統制型リーダーシップの限界

 僕は6年ほど日本IBMでサラリーマンを経験した後に、フレックスファーム、そしてループス・コミュニケーションズという会社を創業し、もうかれこれ20年以上も経営者としてさまざまな経験を積んできた。

 小さな会社であってもトップの悩みは深い。人の苦労と金の苦労だ。必要なお金を調達し、お金を稼ぎ続けていくことは本当に難しいことだ。でも、同じぐらいつらいのは、社員が思い通りに動いてくれないことだろう。

 なけなしのお金をかき集めて約束通り給与を支払っているのに、なんで期待通りの仕事をしてくれないんだ――そう思うと、ついガミガミと文句を言ってしまう。上司の権限を使い、横柄に指示したり、規則を振り回したり、アメとムチの統制を試みたり、なんとか部下を思い通りに動かそうとする。

 すると部下は感情的に反発し、仕事へのやる気を失ってゆく。会社のことはどうでもよくなり、給与をもらうために自らの保身に走るようになるのだ。そして優秀な社員ほど辞めてしまい、経営者はその穴を埋めるのに四苦八苦することになる。

 社員をコントロールしようとするほど、社員の心は離れてゆく。まるで禅問答のようだ。この歯車の掛け違いはどこで起きてくるのだろうか。

 大昔の自動車工場であれば、この考え方は効率的だった。フォードがベルトコンベアによる組み立てラインを導入したのは、今からちょうど100年前、1913年のことだ。流れ作業による効率化は驚くほど劇的で、車1台の組立て時間は12時間30分から2時間40分にまで短縮された。なんと5倍近い生産性の向上だ。

 当時の仕事に感情は不要だったのである。単純労働がほとんどだったからだ。その時に注目を浴びたのが「科学的管理法」であり、その原点にあったのは「人を心のない生き物として扱い、経営陣の思い通りに動かそうとする発想」だった。

 当時の富士通が目指したリーダー像は、まさに現代版の科学的管理法だ。中央から予算で統制し、個人を成果で評価することで、組織の末端まで意のままにコントロールするスタイルだ。しかし、思った通りには従業員は動かなかった。むしろ従業員のやる気を喪失させ、無敵を誇った野武士の社風をも崩壊の危機に陥れたのだ。

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