米大企業の実質税率は10%前半
ところで。
NewYorkTimes(NYTimes)が7月初めに掲載していた記事によると、米国の大企業が近年納めていた税金の実質的な税率は課税対象となる利益の12.6%に過ぎなかったという。
これは米連邦議会のGAO(U.S. Government Accountability Office、会計検査院に相当)による調査でわかったもの。調査の対象となった企業は1000万ドル以上の資産をもち、2008年から2010年にかけて法人税を支払った大企業。「連邦法人税の名目税率(35%)が諸外国に比べて高い」という苦情、そして「法人税制の改革に合わせて、それを引き下げてほしい」という要求の声が大企業経営者らから出ていることは前に記した通りだが、彼らの経営する企業が実際に納めているのは、連邦の所得税、地方税、海外での納税分をすべてあわせても16.9%程度だという。
なお先週あったGoogleの四半期決算発表では、第2四半期の実効税率を「24%」とする一文が発表文書の中にみられるが、この数字がどう算出されたのかはよくわからない。 一方、「課税ベースの浸食」という点について、この報告では連邦の歳入に占める法人税の割合が1950年代の30%以上から最近では9%まで低下したとある。その結果、2012年の税収は法人税2420億ドルに対し、個人の所得税が1兆1000億ドルだったという。
水面下の不協和音なども
さて。
Guardianでは今回のG20に米国のJack Lew財務長官が姿を見せていなかった、と記している。Lew氏は厳格なユダヤ教信者で安息日(土曜日)には絶対に働かないことでも知られる人物なので、そうした単にそうした個人的都合による欠席に過ぎないのかもしれない。また実際にLew財務長官からもOECD指針支持の発表後に、これを支持する声明が出されている。
ただし、Guardianでは、AppleやGoogleなどの米企業をやり玉に挙げ続けている欧州の政治家やとくにフランスの税務当局に対し、米国当局者の間で不満が昂じているなどとする関係者の話を紹介。また、米国企業のやり方を攻撃し続けている英国の保守党政権が、その一方で法人税率の切り下げや研究開発費の税制を優遇するなど、さまざまな手を使って多国籍企業の誘致に乗り出しており、実際に英国への拠点移行を検討している多国籍企業が「四十数社もある」とするErnst & Young幹部のコメントも紹介されていたりする。
さらに、Global Financial Integrityという米国の非政府組織(NGO)などからは、OECDが企業に対する情報開示をもっと徹底させ、たとえば企業にどこの国(市場)でどれくらいの利益を上げたのか、どれくらいの税金を支払ったのか、といった点まで報告させるようにすべきだ、といった声も上がっていると、AP(Businessweek)記事には書かれてもいる。