Apple、Samsung、Googleはどうなる?
話を先に急ごう。
冒頭で触れたBloomberg記事には、1996年に1898ドルだったPCの平均売価が2002年には1026ドルまで低下したというIDCのデータが出ている。また1998年にE-Machinesから600ドルのPCが出たことで、それまでは15%以上あったメーカーの粗利率が1桁台に落ち込んだ、という説明(同社元CEOの話)もある。
さらに、それと同様のコモディティ化がすでにスマートフォン市場でも進みつつあることを示唆する数字もある。IDCの推定によると、スマートフォンの平均売価は2012年初めの450ドルから最近では375ドルまで低下しているという。さらに、今年中国市場では約3億8400万台のスマートフォン販売が見込まれるが、そのうちの66%は200ドル以下の製品になるとするIDCの予想も出ている(米国市場については、合計台数が1億5300万台で200ドル以下の端末は14%になる見通しだという)。
この記事では、AppleやSamsungに「下からの圧力」をかける可能性がある存在として、HuaweiやZTE、Lenovoといった中国の大手メーカーの名前が挙げられている。ただしこれらは海外でも知られる有名ブランドであり、それ以外にもCoolpad、Oppo、Xioamiといった日本ではあまり名前を見聞きすることもない大手メーカーがあって、すでに幅をきかせているという(註5)。また先頃スマートフォンユーザーの数が日本を超えたインドについても同様で、台数だけをみれば、MicromaxやKarbonnといった地元企業が、Appleよりも多くのスマートフォンを販売しているという(さすが出荷額ではAppleにかなわないらしいが:註6)。
こうした新興勢、とくに低価格品を中心とするメーカー各社を相手に、これからどう戦っていくかというのは、AppleとSamsungの両方に共通する今後の課題――われわれにとっては「ニュースの見所」だろう。PC市場での苦い教訓、そして携帯音楽プレーヤー市場での甘美な記憶をもつAppleが、市場シェアと利益率とのバランスをどうとっていくのか。あるいはSamsungの「売れそうなものならどの価格帯のものでも出す」という柔軟な姿勢を取り、コンポーネントも自前で調達できる分だけ、Appleより打ち手が多いようにも思える――としても、消耗戦に引きずり込まれるのを指をくわえて見ているわけにもいかないだろう…。
そんなことをぼんやりと思いながら、「結局最後に笑うのは(Androidを提供している)Googleか?」などと思っていたら、必ずしもそうなるとは限らない、という話に行き当たった。「Android端末の数はいまだに増え続けている(5月半ばにあったGoogle I/Oカンファレンスの時点ですでに累計9億台)ようだが、ただしGoogle経由でアクティベートされる端末の台数はこのところ頭打ち(1日あたり約150万台)で、その分Googleを経由しないAndroid端末の比重が高まっている可能性が高い」という話である(註7)。
AmazonのKindle Fireの例がいちばん分かりやすいと思うが、オープンソースのAndroid を利用しながら、(Googleを閉め出した形の)プラットフォームというのが存在する。そういう製品が中国やインドなどにたくさんあるのではないか、という指摘である。
Googleとしては、ユーザーのデータもとれず、Google Playからのアプリ提供もできなければ、肝心の広告収入も見込めそうにない。そうなるとAndroidは対Appleなどへの抑止力(“moat”)としての役割しか果たさないことになってしまう…。
この1年間にあったAppleを取り巻く状況やモメンタムの変化(外部の人間による評価の隔たり)の大きさを考えると、これから先どんな予想外のことが起こってもおかしくはないとも思える。また、先々の展開の可能性について「具体的な時期を示せなければ何の価値もない」という声(私自身もまったく同意する)があるのを承知の上で、とりあえずいま気になっていることを書き出してみた。
最後に。
iPhone 5ユーザーとしては、今年秋の登場がほぼ確実とされる「iPhone 5S」のことがやはり気になるが、今までに出ている情報を見ると、アップデートの中心は「iOS 7」などソフトウェアやサービス面になるようで、もし指紋認証機能の追加くらいしか新しい部分がなければ、来年まで買い換えを先送りしようか、という気にもなっている。ただし、新たに低消費電力の液晶画面が搭載されて、バッテリの持ちが2倍くらいまで伸びる、ということになればまた話は別だが。