ベトナムに進出することが目的ではない
日本国内での手続きとベトナム国内での手続きを終え、投資証明書が発行されたとしても、会社運営はようやくスタートラインに立ったばかりです。各種手続きはまだまだありますし、「人の問題」「商品(事業)の問題」についても考えなければなりません。
ベトナムのIT業界では、自己のスキルアップのために、日本では想像できないほど頻繁に転職を行います。従業員の転職率が年間20%になることも珍しくありません。そのため、どの地域が自社に適しているかを調べるために、いきなり現地法人を設立するのではなく、駐在員事務所の開設からスタートさせるというやり方も考えられます。「商業の街だから、ホーチミン市へ」という考え方もありますが、当然、競合他社も多く存在しますので、人材定着や人材募集で苦労するかもしれません。そこで少し視点を変えて、取引相手が「北部の会社なのか、南部の会社なのか」「社長は、北部の出身なのか、南部の出身なのか」に注意を払い、それぞれの地域の雰囲気を探ってみることも面白いでしょう。
そしてもう1つ忘れてはならないのが、「日系以外」の競合他社の存在です。ホーチミン市を中心に、世界中からすでに数多くの企業が進出し、さまざまなサービスを展開しています。特に、ベトナムでも「韓流ブーム」が起きており、若い世代を中心に「これからは日本じゃなくて韓国でしょ! 」という風潮が盛り上がりつつあります。
ありがたいことに、ベトナム人は日本に好印象を持ってくれており、かつ、日本製品の購買意欲も高いようです。しかし、企業間取引で契約に臨もうとすると、製品の費用対効果等を冷静に分析するという一面も持ち合わせています。
私が、ベトナム現地で情報交換をさせていただいているJETROやJICA(独立行政法人国際協力機構)の方々も同様に口をそろえて、「ベトナムに行けば何とかなるという幻想は捨てるべき。ベトナムの良いところも悪いところも十分勘案して進出計画を立てるべし」と仰っていることを付け加えておきます。
「親日的なベトナム」というキャッチフレーズを鵜呑みにせず、「ベトナムは親日だけど外国であり、自分は外国人なのだ」という意識を常に忘れないことが必要です。
次回は、ベトナムでのIT活用事情について考えていきます。
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- 古川 浩規
- インフォクラスター
- 文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、日本・ベトナム文化交流協会理事