日本IBMは7月31日、RISCプロセッサ「Power7+」を最大32コア搭載可能なLinux専用サーバ「PowerLinux 7R4」(税別価格=408万2300円から)を発売、8月23日から出荷する。2月にPower7+を搭載したPowerLinuxの2機種を発売しているが、今回の製品はその上位機種となる。Powerシリーズの特徴という信頼性、可用性、高速処理性能を持ちながら、アプリケーションが増加しているオープンソースソフトウェア(OSS)のビッグデータ解析などへの活用を狙う。
IBMは、これまでx86サーバで提供してきたハイパーバイザ「KVM(Kernel-based VirtualMachine)」のサポートを2014年にPowerLinuxに拡大予定で、「IAサーバ以外でのハードウェア選択肢を提供する」(日本IBM システム製品事業 テクニカル・スペシャリスト 新井真一郎氏)意向だ。そのため、今回レッドハットとエンタープライズDBとも連携、Oracle Databaseからの移行を支援するなど、パートナー企業と連携したエコシステム作りにも積極的に取り組んでいく。
IAサーバの仮想集約よりもパワフル
PowerLinux 7R4は、4ソケットでPower7+プロセッサを最大で32コア搭載可能、5Uラック、1Tバイトメモリ、ホットスワップPCIアダプタを搭載している。
日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部長 皆木宏介氏
日本IBM システム製品事業 テクニカル・スペシャリスト 新井真一郎氏
「昨日、ある企業のCIO(最高情報責任者)にお会いしたところ、これまで増やしたLinuxサーバの台数が増えたことで、運用や管理が面倒になってきたことが悩みという話題になった。PowerLinux 7R4は先進的な仮想化機能により、これまでは台数を増やすしかなかったLinuxサーバを、物理的に増やさずに(処理能力を)増やせる。用途としても従来のメールやウェブサイト、ファイル共有から、高性能、堅牢性、高信頼性が要求されるデータ解析、検索、eコマースなど重要なクラウドインフラとして利用できるマシンとなっている」(日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部長 皆木浩介氏)
IBMでは、ハイエンドのUNIXサーバであるPower 770/780/795にLinux専用エンジンを搭載したモデルを投入する計画で、PowerシリーズのLinux向け製品ポートフォリオを拡充させていく。
PowerLinux 7R4は、仮想化機能「PowerVM for PowerLinux」を活用することで、x86サーバの仮想化では難しかった高性能、リソース制御、堅牢性を実現できるという。プロセッサ能力を最小20分の1コア単位から割り当てられ、運用時にはさらに100分の1コア単位で自動で制御できるとしている。PowerVM for PowerLinuxは、これまで脆弱性報告ゼロ件とセキュアな環境であることも特長と説明した。
「物理サーバを仮想集約することだけでは実現できない事例として、ITエンジニア向けeラーニングを提供するシステム・テクノロジー・アイへの導入事例がある。PowerLinux 7R2の導入事例だが、物理サーバの台数削減、同等以上のパフォーマンス確保、初期コストと運用コストの削減、高い信頼性といった要望に対し、従来のIAサーバベースに対してパフォーマンス10倍、仮想空間1.8倍、同時アクセス数3倍を実現した」(新井氏)
PowerLinux 7R4
今回のPowerLinux 7R4は、信頼性と可用性に優れたクラウド資源プールとしても利用できると強調した。PowerLinux 7R4をクラウド資源プールとして利用する場合には、仮想化環境下のストレージの可用性を向上する必要がある。
IAサーバを仮想化して統合した時に単一障害点(Single Point of Failure:SPOF)になり得るストレージ接続の仮想化機能を、PowerLinux 7R4では冗長化してシステムの停止リスクを最小化するという。具体的には、ストレージとの入出力(I/O)を処理する機能「Virtual I/Oサーバ」を筐体内に2つ同時稼働させる。これで、I/O仮想化機能停止障害から仮想サーバを保護し、無停止での保守性も向上させられるという。
ハードウェア障害の原因の約25%といわれるPCIアダプタについては、電源を入れたまま交換できるホットスワップ機能によって、障害が起こった場合もシステムを止めることなく交換作業が可能となる。