三国大洋のスクラップブック

孫社長いわくの「早期のV字回復」なるか--ネットワーク更新で苦労する米スプリント

三国大洋

2013-08-02 07:30

 ソフトバンクによるSprintの買収がすったもんだした挙句に、7月初めになんとか完了したことは既報の通り。また、米国時間の7月30日には、この買収前の最後の四半期に関する決算も発表されていた。決算の内容自体は、6月末でサービスを終了した旧Nextel関連資産の評価損やら特損やらがかさんだ結果、最終損益はアナリストの予想を上回る16億ドルの赤字となった(註1)が、Sprintとしてはこれでなんとか新たなスタートを切れる態勢が整ったともいえる。

 またソフトバンクの最高経営責任者(CEO)孫正義氏も、Sprintの今後について「早い段階でのV字回復を見込んでいる」などと語っていたことも伝えられていた。(註2)

 そんなSprintにとって現在一番の課題は、なんといってもネットワークのアップグレードだろうが、特に肝心要のLTE網の整備・サービス展開の部分でだいぶ苦労しているようだという話が先週news.comに出ていた(註3)。CNETのベテラン記者、Roger Cheng(過去にはフィンランドで取材したNokiaの話なども著していた携帯通信系を得意とする人物)が、Sprint関係者の話などをもとにまとめたとおぼしきこの記事、それ自体には取り立ててセンセーショナルなところなどは含まれていないが、それでも普段はあまり伝えられることもない「通信インフラを手がける者の苦労」といった部分が描かれていて興味深い。

[Why Sprint is taking its sweet time with 4G LTE - CNET(撮影場所はニューヨーク市内。Sprintの担当幹部は29日に発表されたニューヨークの一部――ブルックリン、ブロンクスなどでのLTEサービス開始に言及しているが、まだマンハッタンでは正式に使える状態にはなっていないという)]


周回遅れからの追い上げ

 先に競合他社の状況との比較を記しておくと、全米にネットワーク展開する大手4社の中でLTE展開でもっとも先行したVerizon Wireless(2010年12月に最初のサービスを開始)は、6月末に計画通りLTE網展開の完了を宣言していた(500の市場でサービス展開、人口カバー率は95%で2億9800万人が潜在的に使える状態にあるという:註4)。

 それに対して、加入者数で2位のAT&Tでは7月初めにLTEサービス提供市場が326カ所になったと発表していた(現在の計画では2013年末までに人口カバー率90%を目指す目標を掲げている:註5)。さらに、加入者数がSprintよりも少ないT-Mobie USAでも、7月はじめにサービス提供市場が116カ所となり、カバー人口も1億5700万人まで拡がったと発表していた(同社の目標は、2013年末までに2億人をカバー:註6)

 これらの競合相手に比べて、2012年7月からサービスを始めたSprintは、カバーする地域の点でもまたLTEサービスのスピードの点でも遅れをとっている、というのがRoger Chengの指摘。サービス提供市場の数については7月29日に「新たに41市場でサービス開始、全部合わせると151市場に」という発表があったばかり(ただしカバー人口は不明、2013年中の目標が「2億人をカバー」:註7)。

 また、ニューヨーク市での場合のように一部(ブルックリンとブロンクス)だけでサービスがスタートし、マンハッタンなどはこれからという場所もあるとか、あるいはすでにサービスを展開している市場でも、SprintがLTEに割り当てている周波数帯がまだ少ない(1900MHz帯のGブロックに上りと下りそれぞれ5MHzずつ、VerizonやAT&Tでは現状上りと下りそれぞれ10MHzずつ:註8)ことから、すでにLTEが使える場所でもT-MobileのHSPA+網より通信速度が遅いといった例もある、とChengは記している。

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