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孫社長いわくの「早期のV字回復」なるか--ネットワーク更新で苦労する米スプリント - (page 2)

三国大洋 2013年08月02日 07時30分

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追いつかない光ファイバ回線敷設

 Sprintがこれまで苦心してきた周波数帯域の不足については、Clearwireの買収(2.5GHz帯に使い切れないほど多くの帯域を保有)と、旧Nextelサービスの停止でLTEに転用できることになった800MHz帯(いわゆるプラチナバンドに近いもの)の確保とで、いまでは解決のめどが立っている。

 そして現在一番問題になっているのが、光ファイバ回線の不足だという。ビルや鉄塔の上などに設置した基地局を基幹回線(バックボーン)につなぐためのバックホールのアップグレード工事がかなり大変という話だが、特にSprintの場合はClearwireがWiMAX用に使っていた設備を転用しようとしている箇所もあり、こうしたところでは、これまで光ファイバ(有線)ではなくマイクロウェイブ(短波無線)でつないでいたから、新たに光ファイバを引かなくてはならない。

 有線を引こうとなると、建物の所有者を探し出して承諾をもらったり、行政の許可を得たりなど、いちいち大変な事務作業が必要になってきて、その手間だけでも相当なものになる、といったことが、このnews.com記事には書かれている。Sprintは2013年中に全米5000カ所のClearwire基地局をLTEに転用するとしているが、その中にこうした手間のかかる作業が必要なものがどれくらい含まれいるかなどは書かれていない。

 対照的に、T-Mobileではこのバックホール部分のアップグレードをこれまで2年以上かけて準備し、光ファイバを引いてきているから、LTE展開のスタート自体は遅れた(失敗に終わったAT&Tによる買収話のせいで時間をロスした)ものの、作業着手後は当初の計画を上回るスピードでネットワーク整備とLTEサービス展開が進められている、といったRoger Chengの説明もある。

 Sprintは、その昔ClearwireのWiMAX展開に賭けたのが結局うまくいかず、2年前の秋に「Network Vision」と題するアップグレード計画を発表、そしてiPhoneの取り扱いを発表するまでは、一部で経営の存続を危ぶむ声さえ上がっていた。そのことを考えると、Clearwireの潤沢な周波数帯域を手中に収め、そしてソフトバンクからの資金およびノウハウ面での支援を確保しただけでも大変な進歩といえよう。

 今後はこの資金とノウハウを使って、どれだけ早いペースでLTEの展開を実現できるか、潤沢なネットワーク資源を有効活用できるようになるか、という点に注目が集まることになるが、ただし両社を取り巻く環境が大きく変わりつつあることも周知の通りで、特に米国市場では2014年に新たな周波数帯のオークションが実施されることもほぼ固まりつつある。できるだけ早いうちに(日本でのように)サッカー選手を連れてきて「つながる、つながる」と自慢できるような状態にしておかないと、せっかく手に入れた(他社を圧倒する)「豊富な帯域」という優位性が失われる可能性も残されている。

 最後になるが、Sprintではすでに3つの周波数帯が使えるモバイルルータを発売している。3つの帯域とは、もともとSprintがLTEに使ってきている1900MHz帯、旧Nextelの800MHz帯、それにClearwireが利用権を保有する2.5MHz帯である(註9)。

 同社では、3バンド対応のスマートフォンの第1弾を2013年中にもリリースすると以前から言ってきており、また2013年にはすべての端末でClearwireの2.5MHz帯も使えるようにするとしているが、ただしその中にiPhoneが含まれることになるかどうかはまだ明言していないという。2.5GHz帯のLTEといえばTD-LTE方式だから、このあたりについてはTD-LTEを主導しているChina MobileとAppleとの交渉の進展次第、ということにやはりなるのだろうか。

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