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事業部門とIT部門は融合すべき--インテリジェンスの改革 - (page 3)

大川 淳 山田竜司 (編集部)

2013-08-08 12:00

沖縄で次世代エンジニアを育成、グローバル人材の確保へ


社内のどこにいてもコミュニケーションが可能に

 改革を進めるための施策はまだある。不要と思われるような会議の削減だ。しかし「ただやめようといっただけでは、うまくいかないので、会議室をつくらないようにし、その代わりITのツールを積極活用することにした」(小澤氏)という。特に、新たな事業拠点での例は顕著だ。同社は、関連会社であるインテリジェンス ビジネスソリューションズへのIT業務承継の際、内線電話を設けず、ここで働く全社員にインスタントメッセージ、内線、遠隔での会議、画面共有など多目的利用が可能な社内コミュニケーションアプリケーションを導入した。全社員のログイン状態、在席確認がアプリケーション上で行えるため、パソコンとヘッドセットがあればどこでも仕事ができるようになった。

 場所を選ぶことなく業務ができるとなると、IT事業はさらに広げていくことが可能になる。同社は6月に、システム開発受託サービスの体制強化を図り、沖縄県に新たな開発拠点「インテリジェンス ビジネスソリューションズ沖縄(略称、IBS沖縄)」を設立した。すでに2011年から、同社はベトナムでのオフショア開発に着手している。日本で受託したシステム開発業務を海外に再委託する従来のオフショア形式をとっていた。

 IBS沖縄の設立により、アジア各国をはじめとするオフショアサイトと安全なインターネット環境上にプロジェクトチームを発足させ、ICTを十分に活用し、システム関連の受託業務を進めていく「グローバルチーム型」という新しいオフショア開発モデルの確立を目指していた。

 グローバルチーム型オフショアの実現に向け、IBS沖縄では業務時間の10%を英語や技術の学習に当てる「10%ルール」制度を導入し、オフショア拠点のエンジニアを、英語で直接マネジメントできる人材に育成しようとしている。業務に必要な英語が週3時間の必須で、IT技術研修は週1時間以上という選択制である。

 また、IBS沖縄では、沖縄県の給与水準より2割程度高い報酬を設定している。なぜ、沖縄なのか。「地理的にみて、沖縄はアジア諸国と東京の中間にある。(変化の速度が高い)東京にいると、アジア地域の気風を理解できない傾向があるが、沖縄では、アジア各国の心理も受け入れやすい。人件費も安いのだが、研修を受けさせることでコストは東京と同じにする。グローバルなプロジェクトに参画することが可能な次世代のエンジニアを育てることができるのだから」(小澤氏)。

 小澤氏の試みはまだ始まったばかりだ。ではビジネスとITの関係は、どう変化していくのだろうか。「サービス統合が進むのではないか。今ITインフラのクラウド化が進んでいる。従来ITに固執し、ビジネスのことは考慮しなかった人々にとっての足かせがなくなるのかもしれない。全員がプログラムを書く必要はなくなり、プロジェクトの進め方を学ぶことが求められる。一方、事業部門側もIT部門に依存するばかりの状態を脱していくと思う。例えば、ITインフラは、Amazon Web Servicesで間に合うではないか、と言い出す人も出てきた。サービスを統合し、迅速に行動する。そうした変化に合わせることが重要になる」(小澤氏)とした。

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