デジタル化が変える購買行動--アクセンチュアが消費財メーカーに訴える経営モデルの変革 - (page 4)

田中好伸 (編集部) Emi KAMINO

2013-08-13 08:00

 一般的にはステップバイステップで段階を追って進んでいくものだと考えています。スーパーグローバル/スーパーローカルなオペレーティングモデルを実現するためにはグローバルオペレーティングモデルの段階で必要とされている効率性のレベルを実現できていなければならないですし、デジタルなオペレーティングモデルを構築するためには、スーパーローカルの段階での個別最適化が実現できていることが欠かせないからです。

――消費財メーカーとしてスーパーグローバル/スーパーローカルを目指すためには、各国や地域ごとに個別に対応していかなければならないのか。


 国や地域といった市場の単位を基本となる“アーキタイプ(原型となる要素)”に分類すればある程度フォーカスを絞ることができます。例えばその市場にどういうルートで進出していくかといったことや、取引の構造はどのようなものなのか、さらにその国の消費者のタイプなどでいくつかのアーキタイプに分類できます。

 スーパーグローバル/スーパーローカルになることは、グローバル規模でオペレーションできる能力をつけながらも、個別マーケットではアーキタイプに沿って最適なオペレーションを実現していくことができるということです。さらに、デジタルな世界では市場という単位の個別最適ではなく、消費者という個人単位での個別最適が必要になってきます。こうした場合でも、消費者との1対1の対話を実現し、アーキタイプに沿ってグルーピングをするということが大切になると思っています。

――電機メーカーのSamsungは、全世界の拠点に従業員を送り込んで、その国の消費者の好みをまず把握すると聞く。今回のオペレーティングモデルで言うスーパーグローバル/スーパーローカルでは、商品開発をどのような体制ですべきか。

 エレクトロニクス産業も消費財産業と同じような流れだと思います。研究開発や製品開発に関しては、企業がスーパーグローバル/スーパーローカルという段階にあるときには、一元集中的に研究開発や製品開発を行うのではなく、各ローカル市場のセンシングを行うためにさまざまな国や地域に開発拠点を持ち、アーキタイプをもとに各現地の状況を検知するという状況になります。

――製品開発の拠点を各国ごとに持つとなると、その分コストも必要になるが、どうしたらいいのか。

 マーケティングもしかりですが、製品開発というのは消費者のアーキタイプを基本に統括していけばいい、と考えています。例えば、高齢者向けの製品開発をする場合はこれがひとつのアーキタイプになり、その中に入るのは高齢化が進む日本や西欧諸国ということになります。よってR&Dに関しても各国にセンシングの機能を置かなくても、こういったアーキタイプごとにまとめて集約することで最適化ができ、それに当てはまる消費者の総数を限定できます。

 現状では多くの場合、国という単位で民族性や文化を括れるので、各国の市場に密着した拠点を置くことは大変重要なことです。しかし、アーキタイプを基本に考えていけば、必ずしも高コストなR&D拠点を全ての国に配備する必要はなくなるでしょう。

日本の消費財メーカーは何をすべきか

――日本の多くの企業というのは現在、今回のオペレーティングモデルで言えば、どの段階にいるのか。

 日本の消費財メーカーというのは、エレクトロニクス業界などに比べてもまだまだドメスティックな部分が強いといえます。これまでは、日本市場自体がドメスティックなマーケット環境にあったともいえるでしょう。

 日本ほど大きな消費大国で、ここまで名だたるグローバル企業が市場を攻略できていない国はないと思います。例えばDanoneにしてもL'OrealにしてもUnileverにしても、日本ではグローバル市場で成功しているほど大きな市場シェアは取れていない。それは日本の消費者市場自体が閉鎖的であったからだという理由もあるのではないでしょうか。

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