エリック松永のメディア・デモクラシー講座

「テレビ番組制作の黄金時代」からこれからのメディアの価値を再考する - (page 3)

松永 エリック・匡史(プライスウォーターハウスクーパース)

2013-08-09 18:00

制作会社はもの作りの明確なスタンスを持つべき

エリック松永 現在の番組制作会社は、放送局の下請け会社と化しているようにもとらえられますよね。予算もどんどん削られ厳しい状況になっています。当時と現在では、制作会社を取り巻く環境、“ものづくり”への姿勢に何か違いはあるのでしょうか?

碓井氏 それは、オーバーな言い方をすればスタート時点でのスタンスの違いだと思います。テレビマンユニオン設立時には、非常に明確なグランドデザインが描かれていました。 単純に仕事を請け負うのではなく、「自分たちの創造性と自立性を守ること」を明確に主張していました。そういったスタートのところの哲学、自分たちのモノ作りに対するスタンスの違いではないでしょうか。

 一方、1970年代以降、日本は景気が上向いていくと、それに比例して放送局からの仕事も増えてきました。そういうなかで請け負っていれば、ビジネスとしては成り立つという状況が生じてきました。放送局から言われたことをやっていれば、会社は潤い、社員の給与も上がり、それを良しとする、それを当然と考える制作会社が増えていったのです。

 考えてみると、テレビマンユニオンが導入した出来高制のシステムは、この40年間、どこの制作会社も採用していません。テレビマンユニオンとほかの制作会社の現状との決定的な違いはそこです。

 テレビマンユニオンのやり方は、自分で企画し、自分でプロモートして番組として成立させ、自分で作るという極めてシンプルなやり方ですが、実はこれはものすごく過酷なことであり、だからこそ、ほかの会社では真似はできなかったのかもしれません。業務命令があり、与えられた仕事があって、普通に働いて給料をもらう、この方が楽だったのでしょう。テレビマンユニオンも経営的には厳しい時期はあったが、出来高制システムを続けてきているところが(コンテンツ制作に対する想いとしては)決定的です。もし、出来高制システムを途中で捨ててしまっていたら、結果は違っていたと思います。

 もう1つ特徴的なことで、テレビマンユニオンは組織の理念として、「合議、対等、役割分担」という3原則を揚げている点です。社内に人間的な上下関係はなく、業界に10年いても、新人であってもテレビマンユニオンの中ではものづくりに携わる人間として、対等に意見を言い合う、切磋琢磨しあう仲間である、という考えが根付いています。10年選手も新人もものづくりの人としてテレビユニオンの中では対等でした。この3原則もいまだに続いています。誰も社長を社長と呼びません。「○○さん」と呼びます。なぜなら、社長は役割分担の一環として選挙で選ばれているからです。わたしも代表取締役常務を経験しましたが、役職名で呼んだことも呼ばれたこともありませんでした。

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