エリック松永のメディア・デモクラシー講座

「テレビ番組制作の黄金時代」からこれからのメディアの価値を再考する - (page 4)

松永 エリック・匡史(プライスウォーターハウスクーパース)

2013-08-09 18:00

3.11で問われた視聴率至上主義の功罪

 こういった変化は視聴者側だけでなく、送り手側にもあります。大きく流れが変わったのが1980年代。フジテレビが「楽しくなければテレビじゃない」と打ち出し、営業的にも大きな業績を挙げたことにより、放送各局はこぞって「楽しい」側面を強調した番組にシフトしていきました。しかし、テレビには「楽しいだけ」ではない側面もあったはずです。なのに、放送側はあえて「楽しいもの」以外は除外していってしまいました。テレビは楽しいだけ、面白おかしければそれでいいメディアとして躍進してしまいました。

 こうした風潮はいわゆる「視聴率至上主義」となって表れ、結果的にコンテンツの堕落を招くこととなりました。例えば、90年代に日本テレビが視聴率をとることが善であるという社是を10年間掲げましたが、その結果、番組制作のクリエイターたちは、中身が見るに耐えなくても、視聴率を取れるようなコンテンツが作れば重用され、中身が良くても視聴率が取れないようなコンテンツを作るクリエイターは現場から排除されてしまいました。

 さらに、2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。原発報道を巡り視聴者は、テレビが、自分たちが知りたいことを本当に伝えているのかと疑問を持つようになりました。もっと言えば、テレビのうそがばれてしまったのです。テレビは企業の情報を都合よく流していた側面があったのが、それが3.11でばれてしまいました。テレビには娯楽と情報(報道)の2つの機能があります。娯楽の部分では90年代に劣化がみられてしまっていたが、3.11で情報の面でも質の低下がばれてしまいました。

テレビ業界はどう変わるべきか

碓井氏 最近、放送局の人たちと話をすると、入ってくる新人や入ろうとする学生の志向が変わってきたとのことです。かつては、番組をつくりたい、質の良い番組をつくりたいと思って入ってくるのが当たり前でした。しかし、現在は、番組をつくりたいというのではなく、テレビ局の人になりたいという風になってきたようです。

 ある時期から放送局が日本の中でも給与も高い優良企業となり、カッコよさそうだというふうに見られるようになりました。そういった意味では、違う人種の人たちが放送の世界にどんどん入ってきたのです。

 今までにはないモノを作ろうということになると、人とは違った感覚とかちょっとはみ出た感覚が必要となりますが、現在のテレビ局には、頭の良い優等生たちがその人員の大半を占めています。以前であれば、商社なのか銀行なのか、要するに実業にいくべき普通の人たちが、本来はもう少し混とんとした職場であり、雑多な人員で構成されるべきテレビ局の職場に来てしまいました。世界をひっくり返すような何か突出した発想、何か新しいことをやってやろうという意欲を持った人が入りづらくなってしまったのです。

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