Smil氏 生物圏(の生み出す産物)を収穫するというのは、いまだに人間にとって最も根本的な活動(略)。人間にとって、マイクロプロセッサ、Atlantic Monthly(のような雑誌)、ゲーテッドコミュニティ(gated communities)、Gucci(の製品)、高成長のGDPなどはいずれもなくなって困るものではない。だが、農作物や樹木がなければ人間は生きていけない。 (略)
今の人たちは、電子製品や高速で動く機械類の進化といったことにばかり執着しているけれど、過去100~150年の間に起こった最大の発明はアンモニアの合成だ。(略)
編集部 8月には「Made in the USA: The Rise and Retreat of American Manufacturing」という新著が出版されるが、どんな内容のものか?
Smil氏 あの書籍が出ると大変なトラブルが持ち上がるだろう(略)。そう考える理由はつまり、人々はいま『米国で製造業のルネサンスが起こっている』などと思っているけれど、実際にはもちろんそんなことはない、そのためだ。この12年間に米国では700万人分の製造業の仕事が失われた、一方で取り戻した仕事の数は40万人分に過ぎない。そんな状態でルネサンスなどといえるのか。(略)米国でかつてのように数百万~数千万人規模の製造業の雇用が生まれることは決してないだろう。絶対にない。(略)
編集部 手がけたいと思いながらまだ著作執筆を果たせていない話題はあるか?
Smil氏 とても良い質問だ。そういう話題は77ほどある。ただし、私はもう年寄り(69歳)なので、けっして著作を出すことはないだろう。(略)頭の中には歴史に関する事柄がたくさんある。歴史のかなり深い部分につっこんだ事柄だ。王侯貴族や政治家、殺りくや戦争といった事柄に関する歴史だけでなく、食物の歴史、建物の歴史など……(略)。アイデア(人の考えた形のないもの)はほかの人間によって何度でも解釈されるもの、けれど建物ならそんなことは起こらない。
このSmilという人が著した書物はどれも「5分でわかる」わけでも「すぐに役立つ」わけでもなさそうで、その分余計に興味をそそられてしまう。Smilは昨年2月に来日して東京大学で話をしていたらしい。