大河原克行のエンプラ徒然

電機大手決算を読む:スマートフォンに振り回された4~6月期--ソニーが一人勝ち - (page 2)

大河原克行

2013-08-22 15:26

 富士通は、PCと携帯電話の売上高が前年同期比16.4%減の1425億円。「携帯電話は、フィーチャーフォンの市場縮小に加えて、スマートフォンの新機種が6月に投入した1機種のみにとどまり、売り上げベースで前年同期比30%減になった」(富士通 取締役執行役員専務 加藤和彦氏)と説明。スマートフォンでは通信キャリアの販売方針見直しで減収になったとして、ドコモのツートップ戦略の影響に言及した。

 一方で、シャープは携帯電話の売上高は前年同期比71.8%増の502億円。「 (ドコモ向けには)もともと大きな数を見込んでいなかったこともあり、影響は軽微」(シャープ 代表取締役社長 高橋興三氏)とした。

 シャープは、前年同期に主要デバイスの供給不足から販売が低迷したという背景があったことが前年実績を上回った要因としては大きい。実際、7~9月期以降の販売見通しを踏まえて、携帯電話の販売台数を期初計画から130万台減の550万台に、売上高は300億円減の2100億円へと下方修正している。これも今後のツートップ戦略の影響を踏まえたものといえなくもない。

 NTTドコモは、夏モデルから“ツートップ戦略”としてソニーの「Xperia A」とサムスンの「GALAXY S4」を集中的に販売する施策を展開。7月までの間に、5月17日に発売となった「Xperia A SO-04E」は約110万台、5月23日に発売となった「GALAXY S4 SC-04E」は約55万台を出荷したという。

 NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏は、同社の4~6月期決算発表の席上で「Xperia Aは当社のスマートフォンとしては過去最高のペースで売れており、発売から10週間のうち9週間で首位となった。高い支持を得ている」と説明。「ツートップ戦略には一定の成果があり、求めやすい価格による提案もできた。スマートフォン基盤の拡大につながっている」とコメントした。

 「個別のメーカーについての話はできないが、ツートップ以外のメーカーの製品には影響があっただろう。だが、これはここ3~4年のスマホシフトの競争のなかでの結果である」(加藤氏)と発言し、ツートップ戦略が国内メーカーに影響していることについても自ら言及していた。

 実際、ツートップの一角を占めたソニーの携帯電話事業は好調だ。

 4~6月期の同社のモバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)の売上高は前年同期比36.2%増の3890億円、営業利益は341億円増の59億円。「大幅な利益の改善はスマートフォンの貢献によるもの」(ソニー 業務執行役員 SVP 神戸司郎氏)だ。

 同社の4~6月期のスマートフォンの販売台数は、前年同期比220万台増の960万台。

 「5月から日本で販売を開始したXperia Aが発売以来、全キャリアをあわせた端末シェアで第1位を9週獲得した。6.4型の“Xperia Z Ultra”も6月の発表以降、各方面から大きな反響があり、今後のビジネスにも期待が高まる。我々の技術のすべてをつぎ込んだものが評価を得ている」(神戸氏)

 ソニーが一人勝ちとなったスマートフォン市場。各社の携帯電話事業の明暗がくっきりと分かれた4~6月期業績だったと言ってもいいだろう。

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