電機大手決算を読む:過去の業績が足かせ--“追い風”にのって成長戦略を描けるか - (page 2)

大河原克行

2013-08-27 16:01

 ビジネスPCは前年同期に比べて増加しており、「Windows XP」からのリプレースが徐々に顕在化しているようだ、サーバ事業とソフトウェア事業は前年並みになったという。

 携帯電話事業が含まれるその他事業は、売上高が前年同期比3.5%減の1431億円、営業損失は62億円悪化の99億円の赤字。携帯電話の出荷台数の減少に加え、電子部品事業を担当するNECトーキンが非連結対象となったことなどが影響した。


NEC 取締役 執行役員兼最高財務責任者(CFO) 川島勇氏

 川島氏は「通期計画である営業利益1000億円の確実な達成を目指す。これは、(2015年度を最終年度とする)中期経営計画の初年度として達成すべき最低限の目標」とする。一方、新規開発中止を発表したスマートフォンについては「現時点では影響は織り込んでいない。だが、ネガティブファクターではなく、前向きなものと捉えており、事業へのマイナス影響はそれほど大きくないと考えている」などとした。

液晶事業が回復しつつあるシャープ

 シャープは、売上高は、前年同期比32.6%増の6079億円、営業利益は前年同期の941億円の赤字から30億円へと黒字転換。経常損失は1038億円の赤字から910億円改善したものの、127億円の赤字。当期純損失は前年同期の1384億円の赤字から1204億円改善したが、179億円の最終赤字となった。

 シャープ代表取締役社長の高橋興三氏は、「第1四半期(4~6月)は、売上高で5500億円、営業損失では100億円の赤字を見込んでいたが、それを上回る着地。営業利益は、第3四半期(10~12月)、第4四半期(2013年1~3月)に続き3四半期連続での黒字となった」と経営再建に向けて着実に歩みを進めていることを強調した

 やはり気になるのはテレビ事業と液晶事業の回復だ。

 テレビを含むデジタル情報家電の売上高は前年同期比18.5%増の1589億円、営業損失が188億円改善したが13億円の赤字となった。そのうち、液晶テレビは売上高が同3.4%増の803億円、販売台数は同6.2%減の156万台となった。


シャープ 代表取締役社長 高橋興三氏

 「液晶テレビは米州と欧州は低迷したが、国内では販売台数では前年同期比2%減となり、底打ち感がみられている。60型以上の製品へのシフト戦略などで金額ベースでは3割増という単価アップがみられている」(高橋氏)などとし、通期黒字化に向けた取り組みが進展していることを示した。

 液晶事業の売上高は前年同期比32.8%増の1938億円、営業損失は539億円改善したものの、95億円の赤字となった。液晶は大型液晶の外販が好調に推移した。

 さらに、スマートフォンとタブレット向けの需要増による中小型液晶の販売増、戦略的アライアンス効果などから回復基調にあることを強調。主力の亀山第2工場の稼働率も計画通りに進捗したという。今後は、IGZO液晶などの高付加価値パネルへのシフトを推進するなど、黒字化に向けた取り組みを加速する姿勢を強調する。回復の道筋には徐々に手応えを感じ始めたといえそうだ。

“追い風”を生かせるか

 電機大手8社の業績を俯瞰(ふかん)すると、やはり円安が追い風となって、売上高や収益にはプラス効果となっているものの、依然として構造改革の厳しい最中にある企業も少なくない。

 テレビやPC、携帯電話といった過去の業績を牽引してきた製品群はむしろ足かせとなっていることが、改めて浮き彫りになった決算ともいえよう。

 円安、アベノミクス、株高という追い風を成長戦略や回復基調を本格化させる“勢い”へとつなげることができるかが、各社に共通した課題だといえよう。

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