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汎用製品への特化こそ競争力を高める--インフォテリア平野社長 - (page 3)

大川淳 山田竜司 (編集部)

2013-08-29 19:02

エンドユーザーの声への過剰な依存は疑問

--開発や経営の基本となる発想はどのようなものか?

 IT事業を運営する上でのベースの1つは、製品について、「お客様の声を聞き入れすぎない」ことでしょう。製品開発の方針を打ち出していく上で、顧客の声に大きく依存していたとしたら、Handbookは誕生していなかったのではないでしょうか。当時、iPhoneでビジネスをやろう、という構想に賛成してくれるのは、100人中2~3人かそれ以下だったと思います。

 開発のための組織つくりでは、実に日本的な特徴があります。それは開発にあたる人数への視線です。投資家は、開発要員が多ければ多いほど、安心します。しかし先進的ソフトを開発するには作業に携わる人数が少ない方が好ましいのです。人数が多いと、製品は最大公約数のようなところに落ち着き、妥協の産物になってしまうからです。そこでいかに新製品の開発に携わる人数を少なくするかということに腐心しています。


--新たな発想のヒントはどこにあるのか?

 IT関連の企業の中にさえ、TwitterやFacebookの使用を禁止しているところがあるそうなのですが、そんな閉ざされた空間から、アイディアが生まれてくるのでしょうか。当社では社内のSNSを通じて、言いたいことを言い合っています。これは、やりたいことがあれば、やってもいいのだとの感覚をつくりだすのに役立っています。

 開発者たちは、なかなか口に出しては言えなくても、ネット上になら言いたいことを書けるということもあります。営業やマーケティングの領域や外向きの企画は、そういうところから発生することがあります。しかし、製品は異なります。製品の源は、集合知ではないと考えています。

清水の舞台から飛び降りる気概を持とう

--時代が大きく動こうとしている時に必要な視点とは何か?

 かつて、OSがMS-DOSからWindowsへと移行した際、日本のソフトベンダーは弱体化したところが少なくなかったのです。ビジネスソフトでは、外資系ベンダーの台頭を許してしまいました。それまでMS-DOSの上で稼いでいた各社は、Windowsが現れてもしばらくの間様子見をしていました。その後Windows版の製品を投入したのですが時すでに遅し、でした。

 最近はどうやらクラウドへの対応でも、この時と似たような事態になっているようです。クラウドへの取り組みが掛け声ばかりになっている企業が多いのではないかと思います。クラウド関連のセミナーを開催して結局は、オンプレミスの商材を売っているというような例すらみられます。オンプレミスで十分稼いでいるので、クラウドには移行しない。でも、気が付いたら大変なことになっていた。そんな可能性もあります。この1~2年は、経営手腕が問われるところだと思います。

--変化のためには、何を実行すべきなのか?

 日本には、ベンチャー企業の数が足りません。米国の状況をみると、新しい企てに従来の企業は取り掛かかりません。クラウド分野でもベンチャーがどんどん出てきて、選手交代しています。オンプレミス分野の企業は危うくなり、人員を削減する。すると、削減された人員は、ベンチャーに移っていきます。

 国内では、そのような文化も仕組みもないので、既存の、ある程度大きい企業が変わらなければならないのです。エンドユーザーの声に耳を傾けすぎると、それに縛られ、行動に制約ができてしまいます。最も恐ろしいのは、経営者が認識を変えようとしないことです。

--ソフト開発の基本姿勢は、どのようなものか?

 製品には、いわゆるライフサイクルがあり、市場もエンドユーザーも日々変化します。それを見据え、新しいものを出していかなければ成長が積み上がりません。ソフト開発の基本は、清水の舞台から飛び降りるという気持ちも必要です。開発したものの、1本も売れなかったソフトもあります。われわれはすべてが成功するとは限らないことが前提で投資し、業務を続けています。いわばムダ金を使っていることになりますが、そのような取り組みの中からヒット作が生まれてくるのです。

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