セールスフォース・ドットコム主催の開発者向けイベント「Developer Conference Tokyo 2013」が9月6日に開催された。モバイルクラウドにフォーカスし、基調講演に登壇した米Salesforce.comのプラットフォーム担当エグゼクティブバイスプレジデントであるMike Rosenbaum氏、テクニカルプラットフォームマーケティング担当ディレクターであるQuinton Wall氏は、集まった開発者に「ビジネスアプリケーションのモバイル化はこれから本格的に進展する分野。ぜひ、われわれのプラットフォームでビジネスモバイルアプリケーションの開発を」と呼びかけた。
企業向けでもモバイルでの素晴らしい体験が求められている
基調講演でRosenbaum氏は「Salesforce.comはCRM(顧客情報管理システム)というキーワードで普及していったが、われわれはCRMだけでなく、皆さんがカスタマイズできるプラットフォームを提供してきた」とプラットフォームの提供が同社のビジネスを大きく飛躍させる要因となったと強調した。
実際に同社のサービスには1日あたり10億トランザクションのアクセスがあるが、そのうち半数がAPI経由のアクセスで提供しているプラットフォームで開発されたカスタムアプリケーションの利用比率が高いことを示している。Rosenbaum氏は、このカスタムアプリケーションのモバイル化を呼びかけた。
プラットフォーム担当エグゼクティブバイスプレジデント Mike Rosenbaum氏
「モバイルの登場でわれわれの生活は大きく変わった。この変化はコンシューマーの世界では当たり前になっているものの、企業向けアプリケーションではどうか? まだ確立されているとはいえない。だから、皆さんにとってもチャンスでもある。エンタープライズアプリケーションでも、コンシューマー同様にエンドユーザーに素晴らしい体験を提供するモバイルアプリケーションの登場に期待する。Gartnerの予測では、2017年には90%がモバイルとデスクトップの両方に接続するアプリケーションとなる」(Rosenbaum氏)
開発したモバイルアプリケーションは、同社のマーケットプレイス「AppExchange」を介して流通することも可能だ。1800本のアプリケーションが提供されているが、うち日本企業が開発したものは188本となっている。
Salesforce.comではモバイルアプリケーションの開発を支援するためのプログラム「Mobile Accelerator Program」を開始した。このプログラムでは、モバイルアプリケーションの開発を推進するためのリファレンスアーキテクチャを提供、トレーニングや認定制度を展開する。企業内Twitterとも言える「Chatter」の新版となるVer.4.0をリリースし、モバイルファーストによる設計を実現している。
フィードから始まる“フィードファースト”なコミュニケーション
モバイルアプリケーション開発を推奨する背景として、テクニカルプラットフォームマーケティング担当ディレクターであるQuinton Wall氏が説明した。
「アプリケーションによってコンシューマーユーザーのコミュニケーションのスタイルが変化した。朝、私がやるのはモバイルのFacebookにアクセスし、自分のフィードにどんな投稿があるのかを確認することだ。このフィードを優先したコミュニケーションスタイルがビジネスの世界でも起こってくる。実際にChatterでは、自分の仕事に関係ある投稿があげられ、それを基軸に情報を入手する。そこから人とのつながりが生まれる。私は日本が大好きで、日本で流行している“LINE”にとても感心している。LINEでも、人とつながることで新しい発展が生まれる。ビジネスの世界でも同様だ」(Wall氏)
モバイルは仕事のスタイルにも変化をもたらし、長時間デスクトップに向かって作業する仕事スタイルから、モバイルを数分利用する時間を積み上げて仕事をする「Micro-Moment」が重要になることも指摘。アプリケーション開発もMicro-Momentの視点で開発していくことが重要だと説明した。