「枯れた技術」の活用がシステム構築の要点
--システム構築に際して注意している点は?
吉見 システム導入を考える場合、世界的に見て安定している技術を選択することを前提としています。いわゆる枯れた技術をうまく使うことが重要です。「とんがった」技術は、短期間で消え去ることもあり、採用すると後々メンテナンスが難しくなります。LinuxやApacheなども使いますが、フレームワークには業界標準的なのものを採用しています。扱える技術者の数が多く、脆弱性の情報も多数得られるからです。
--システム部門の使命とは、どのようなことか?
吉見 戦略的な経営とITをつなぐことでしょう。ITに投資することにより結果としてコストを抑え、社員が動きやすくなるよう、システムやサービス基盤を構築する。もちろん、必ずしも戦略とITが結びつかない面はあります。ITは何らかの目的を達成するための手段であり、手段そのものには戦略性はないからです。
システム部長 吉見隆史氏
これまでの企業におけるシステム部門はコストセンター化していることが多かったと感じます。ユーザー部門からの要求を完全には受けられずに不満をぶつけられる、あまり報われない部門だという認識です。ITは手段なので、目的自体に関わることも、そうでないこともありました。
私はシステム部門が「ITは手段である」としながらも、目的自体にどうコミットしていくかが大事だと考えています。そのように考えて行動した結果、例えばシステム部で人的リソースの制約が出たような時も、声の大きいユーザー部門の都合を優先するという不合理な状況を減らす事ができました。システム部門のリソース制約を基本に戦略を考えようという意識を共有したことで、システム部門とユーザー部門の相互理解が深まったのです。
--ユーザー部門との相互理解が進んだ背景には、何があったのか?
吉見 システム開発の上流工程で要件定義をするわけですが、さらに上の工程において社としてすべきことを決定する体制があることが重要だと考えました。社長がリーダーシップを取り、役員、部門長が一緒になって「すべきこと」を決めていく仕組みを作ったのです。技術そのものより、ITを手段としてどのように位置付けるか。制約条件などについても、社長の岩瀬がITを深く理解してくいる点に助けられています。
また、システム部門からマーケティングや企画など、ほかの部署への配置転換を積極的に行っています。システム部のさまざまな制約に縛られた環境が身体に染みついた人が、ユーザー部門に行って要件をまとめるわけです。社内には、システム開発が絡むプロジェクトを回し、案件を企画、具象化するプロジェクトマネジャーとして働ける人材が、あちこちの部門に散らばっています。そのようなビジネスアナリストのような人をプールして、うまく活用していきたいと考えています。