至るところにデータがある

ビッグデータを効率的に活用できるのはデータサイエンティストだけではない--オラクル - (page 2)

田中好伸 (編集部) 三浦優子

2013-09-20 08:00

機械学習の可能性

 (3)でいうデータ貯蔵庫は、既存のDWHとは異なり、分散並列処理プログラミングフレームワーク「Apache Hadoop」のようなテクノロジを活用し、非リレーショナルなものも含め、今すぐに活用する目的はなくても、将来活用する可能性を考えてデータを保存する新しいタイプのものを指す。

 「データは他のものとは違い、利用すれば消えてしまうものではない。一度利用したデータも、再び分析して新しい価値を生む可能性を持っている。それを考えてデータを保存しておく」

 これまでのDWHは、高額なものになりがちだったが、「Hadoopと安価なストレージオプションを使えば、ぐっとコストを引き下げることができる。ある銀行では、ストレステストを受ける際、データが15の拠点に分散していたため、従来はメインフレームに分散していたデータをOracleのHadoopクラスタを活用し、データを集約。どんな質問を受けても答えることができるような体制を整えた」

 (4)のデータに基づいた行動の推進とは、モバイル広告やマシン・トゥ・コミュニケーションなどデータに基づいた行動の推進を指す。「機械学習のアルゴリズムには、さまざまな活用の可能性がある。その顧客のためだけの商品価格や情報を提供するアルゴリズムがあれば、顧客との関係も変わっていく」


 こうした説明を聞くと、これまで人間が担当してきたことの多くをビッグデータが代行していくように思える。その疑問に対してSonderegger氏は、「ビッグデータが素晴らしい答えを導き出すといっても、大量のデータに付加価値を与え、クリエイティビティを生み出すのは人間の役割だ」と否定する。

 ビッグデータによってデータサイエンティストという役職が脚光を浴びているが、「データサイエンティストに加え、ビジネスアナリスト、業務の専門家という3タイプの人がデータを分析するようになる」という。

 ビジネスアナリストとは、日本企業では馴染みがない肩書だが、米国企業にはビジネスアナリストの専門部署が存在する企業もある。SQLを使ってデータを分析する、ビッグデータ以前からあるデータ分析の専門家だ。業務の専門家とはデータではなく、業務のプロフェッショナルのことだ。

 「この3つのタイプのデータを扱う人が、ビッグデータの影響で変化することになるだろう。データサイエンティストは新しいタイプの、多種多様なデータを分析する。ビジネスアナリストはこれまでは2年間のカスタマーデータを扱っていたのが、4年間のカスタマーデータを扱うといった具合に扱うデータの量が大きくなる。業務の専門家はビッグデータによって、疑問に対する答えを見つけ出しやすくなるだろう」

 日本の場合、業務の専門家がこれまでの体験をもとに答えを導き出してきたが、「そういうノウハウを持った方に、ビッグデータの価値を認めてもらい、経験とデータを合わせて利用することで新しい発見があることを理解してもらいたい。そのためには、事例を紹介していくことが有効だと感じている」と積極的に事例を公開することで理解を広める。

 その事例のひとつが自動車部品大手のDelphiを挙げた。商品である2万点に及ぶパーツに対し、保証期間に寄せられるクレームについて、より短時間に答えを見つけ出すための方法を模索し、ビッグデータを活用することとした。答えを導き出すためには、仮説を立て検証することが必要になるが、仮説から検証までの時間の短縮を実現した。

 「このようにビッグデータを活用した成功事例が増加し、紹介できるようになってきた。ソーシャルメディアで自社の製品がどう話し合われているのかをリスニングし、新しい商品を開発するヒントを探るといったことが当たり前となってきた。企業もコミュニケーションの方法が大きく変貌していることを実感する時ではないか」とSonderegger氏は提言している。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]