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三国大洋のスクラップブック

「チープなiPhone」が出なかった理由、あるいはアップルの「隠し球」 - (page 4)

三国大洋

2013-09-20 16:30

中古iPhoneという「隠し球」

 6月初めに「米『中古iPhoneブーム』の光と影」という記事を書いていた。あの動きがその後さらに活発化し、8月下旬には「Apple自体でも下取りプログラムを開始する」という話が伝えられていた(米国のApple Storeでの話)。

MacRumors: Apple set to ship old iPhones to Third World - Apple 2.0 (Fortune)

 この話を伝えたPhilip Elmer-Dewittは、9月14日付けの記事のなかで、「米国のiPhoneユーザーは実質タダで5cに機種変更できる」「回収された中古iPhoneの大半が、中国やインド、ブラジルといった新興市場に送られる」などと書いている……。これを目にして、とんだ「灯台下暗し」であったことに遅まきながら気付いた次第である。

For most iPhone owners, trading up to the 5C is 'free' - Apple 2.0 (Fortune)

 ここで一度整理してみる。

  • Appleは米国市場で、「iPhone 5s」という最上位機種の選択肢を残しながら、新たに中核製品に据えた「iPhone 5c」を表面的には半額に値下げ(高額な機種に対する需要が鈍っていることへの対応)。しかも、これまでとは異なり、ユーザーには99ドルでも「新しいiPhone」が手に入れられるようにした(一世代前の「型落ち製品」とは見られずに済むようにした)
  • 「iPhone 5c」の投入で、欧州などでも「iPhoneの最新機種」が以前よりいくらかは手頃な値段で手に入るようにした。
  • 最上位機種には、いかにも中国市場で受けそうなゴージャスな外見の「ゴールド」モデルを追加。
  • 同時に、高級ブランドのイメージを損なわないため、中間層(もしくは大衆)に手の届くような価格帯の製品投入は避けた(そこだけを捉えた投資家は、落胆してApple株を売り払った)
  • 新興国や欧州のプリペイド・ユーザー向けとして、中古のiPhone 4SやiPhone 4を用意。「在庫確保」のために、新機種買い換えへの促進策も兼ねたiPhone下取りプログラムを開始。既存のiPhoneユーザーが一時負担なしで新機種への買い換えをできるようにした。

 中古iPhoneを含んだ場合の価格設定は次のようになる(4つの機種の正味の値段がだいたい100ドル刻みで並ぶことに注意してほしい)。

 現時点で分からないのは、新品のiPhone 4sが新興国市場で販売され(てい)るのか、その場合いくらぐらいになるのか、という点。また中古iPhoneについては、Appleの定める「基準価格」みたいなものはないから、需給のバランス次第で相場が上下し、その時々で落ち着くべきところに落ち着くことになるのだろう。

画像(5sと5cは16GB版、iPhone 4Sは8GB版のみ)
画像(5sと5cは16GB版、iPhone 4Sは8GB版のみ)

 そして、下取りの仕組みがうまく回り始め、供給がどんどん増えれば、300ドルどころではなく、もっと安いiPhoneがたくさん出回るといった状況も想定できる。なかなかトリッキーだが面白い展開と思える(少なくとも、新製品の出荷台数だけを追跡して、「Androidスマートフォンのシェアがグローバル市場で約8割まで増加」などといったよく見かける類いの市場調査レポート、それを元にしたニュース記事などは、いまほど意味を持たなくなる)。

 そして、新型iPhone発表前までよく話題になっていた「400ドル程度のiPhone」、あるいはXiaomi製品などと同じ価格帯の品物を、Appleはこれで用意できることになる。そうなればXiamiやAmazonのように、わざわざ別の収益源を確保する必要も当然なくなる。

 国別やキャリア別に違う製品を用意しないAppleとしては苦肉の策とも思えるが、こうしてみると中古iPhoneの下取りと再販がAppleにとって重要な意味を持っていることがより明確に伝わってくる。また他社製品に比べてリセールバリュー(残存価値)が高いといわれるiPhoneだけが可能な方策とも思える。

 中国などの人々が「中古でもやはりiPhoneがいい」と考えるか、それとも「同じような値段なら新品のAndroid端末のほうがいい」とするか。それについては、まだよく分からない部分も残っている。また投資家筋からは「新品が売れなければ、大して意味はない」といった声も上がるだろう(四半期の業績や株価には直接表れにくいため)。それでもこのやり方を通して、Appleがこれからの市場で相当数のiPhone/Apple製品ユーザーに新たにリーチできる、そのことはたぶん間違いない(しかも、ブランドイメージを損ないかねない低価格製品を投入せずに)。

 なお、2年前(10~12月期)のiPhoneの販売台数は3700万台超、またその後の1~3月期の販売台数は3500万台超となっていた(機種別の台数は不明)。この時販売され、いまだにユーザーの手元に残っているiPhone 4/4sがどれほどあるかは分からない。Appleには次の決算発表から、自社で下取り、再販したiPhoneの台数だけでもぜひ公表してもらいたいところである。

 今回もまただいぶ長い文章になってしまったので、第1の課題(最上位機種にどんな魅力を付加するか)については別途記すことにする。

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