商用のHadoopディストリビューション「MapR」で事業を展開している米MapR Technologiesは9月19日、日本法人マップアール・テクノロジーズを設立し、国内での本格的な活動を開始すると発表した。新日鉄住金ソリューションズとノーチラス・テクノロジーズの2社とパートナー契約を締結、販売、マーケティングや顧客支援で協力し、市場の開拓に取り組む意向だ。
HadoopはApacheのオープンソースプロジェクトであり、大規模データを複数のコンピュータ上で分散処理し、管理するフレームワークとして期待されている。ビッグデータの解決策としても注目を集めている。
MapR Technologies ワールドワイド フィールドオペレーション 担当 上級副社長 Steve Fitz氏
マップアール・テクノロジーズ セールス ディレクター 平林良昭氏
MapR Technologiesは「従来のHadoopは非効率な実装や、その1カ所が停止するとシステムの全体が停止してしまう単一障害点が存在するといった課題を抱えている」と指摘、MapRのHadoopディストリビューションは「これらの課題を解決、エンタープライズ向けの高い信頼性とパフォーマンスを実現する」とそのメリットを説明している。
MapRのHadoopディストリビューションは、C/C++で再設計した、独自のファイルシステムを採用。ファイルのメタデータを管理するネームノードの分散配置や、実行単位を管理するジョブトラッカーに高可用性機能を付加することなどにより、これらが単一障害点にならないようにしているという。
ミラーリングで災害復旧(DR)対策とクラスタ同期化、スナップショットによるポイントインタイムリカバリにより、耐障害性を向上させている。データ入出力をNFS経由とすることで効率化するなど、運用性を改善しているという。
ワールドワイドでフィールドオペレーションを担当する上級副社長のSteve Fitz氏は「Hadoopは、大量なデータをビジネスに生かせるだけでなく、コストも低減化できる。当社は数年かけて、ファイルシステムの改善、複雑性排除などさまざまな技術革新を行い、MapRをエンタープライズで活用しやすくしてきており、高い可用性、性能を実現した。Hadoopの技術は世界的にみれば、未成熟の段階にあるが、企業での導入が増えれば、さらに進化していくだろう」と語り、高成長が見込まれる、ビッグデータ市場でのプラットフォームの一つとなるよう期待感を示した。
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国内では今後、新日鉄住金ソリューションズ、ノーチラス・テクノロジーズと連携し、販売やマーケティングの相互協力とともに、技術情報の交換、サポート体制の整備などを進める。日本法人のセールス ディレクター平林良昭氏は「パートナー各社と一緒にソリューションを作り、日本の企業に提供していきたい。近くシステムエンジニアや技術支援の要員を増やし、6カ月で10人程度の態勢にする」と話す。
新日鉄住金ソリューションズは「日本でビッグデータへの関心やニーズが高まりつつある中、MapRの日本法人が設立されたことを歓迎する。当社はMapRのHadoopディストリビューションをはじめとするビッグデータ基盤の普及を一層推進し、企業の情報活用を支援していく」とした。
ノーチラス・テクノロジーズの代表取締役社長である神林飛志氏は「従来のHadoopは、運用性に課題があり、必ずしも業務処理に適しているとは言えなかった。MapRは、国内での十分なサポートを受けることができ、分散処理に必要な要素がそろっており、業務で普通に使えるHadoopだといえる」と評価した。
MapRの価格は、年間ベースのサブスクリプションで、最上位の「MapR M7 EDITION」が1ノードあたり70万円から。標準版の「MapR M5 EDITION」が40万円から。機能が限定された無償版の「MapR M3 FREE」もある。
MapR Technologiesは2009年に設立され、従業員数は約200人。米国、イギリス、フランス、ドイツ、シンガポール、オーストラリア、韓国、スウェーデンに拠点がある。今回、本格的な活動を始める日本では既にリクルートテクノロジーズなど、16社が採用している。同社のMapRは、Google Cloud PlatformやAmazon Web Servicesも活用している。