AWSを活用--米ナスダックが金融向けに提供するクラウドストレージの要点

三浦優子 2013年09月24日 16時27分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 9月13日に開催されたイベント「AWS Cloud Storage Day」の基調講演では、金融業向けクラウドストレージ「NASDAQ OMX FinQloud」が紹介された。このサービスは、NASDAQ OMXが米国で提供しているものであり、Amazon Web Services(AWS)のストレージサービスを活用している。

 FinQloudは金融業をターゲットとしたクラウドサービス。AWSのインフラにNASDAQ OMX側が付加価値をつけた形で再販する。「AWSの全面的な協力のもと、AWSがインフラを、NASDAQ OMXが金融サービスの専門知識を付加し、安全なクラウド利用を実現する」と基調講演に登壇したNASDAQ OMX マネージングディレクター Adam Honore氏はアピールした。


NASDAQ OMX マネージングディレクター Adam Honore氏

クラウドへの懸念はセキュリティと可用性

 NASDAQ OMX FinQloudは、金融業界をターゲットとしたクラウドストレージ。同社のマネージングディレクターであるHonore氏は、「われわれはサービスを提供するにあたり、金融業界でどのようにクラウドが活用されているのか1月に調査した。それから時間が経っているので、実態には少し変化があるだろうが、すでに1月時点で3分の2の企業がクラウドを利用していることがわかった。これは予想よりも高い数字であった」と金融業界でもすでに、クラウド利用が始まっていることが調査の結果から明らかになったと説明した。

 その一方でクラウドに対する懸念材料として、セキュリティと可用性という2点を心配する声が多く、それ以外にもクラウド利用による遅延やパフォーマンス、内部統制なども懸念材料としてあがった。

 クラウドをどのように利用しているのかについては、主に開発とテスト用に利用されることが多いが、今後12カ月で実利用へと移行することを検討するという声が多かった。クラウドストレージについては、現時点ではデータ処理量を下回る分量しか利用されていないものの、今後12カ月でクラウドストレージの利用量がデータ処理量を上回る見通しであることも明らかになった。

 AWSの利用状況としては、実際に利用していると答えた企業は17%にとどまったものの、検討中と答えた企業を加えると過半数を超える割合となる。

 セキュリティへの懸念を表明する金融業界でクラウドへの興味が高い背景としては、「47%の企業が現在のインフラにかかっているコストを削減するために、現在クラウドを利用しているか、今後クラウドを利用したいという声が上がっている」(Honore氏)とインフラコスト削減が要因となっている。

FinQloudで提供されるR3の概要 FinQloudで提供されるR3の概要
※クリックすると拡大画像が見られます
R3のワークフロー R3のワークフロー
※クリックすると拡大画像が見られます

 こうした声に応えるものとして、NASDAQ OMXではFinQloudの提供を始めた。FinQloudは(1)企業の会計帳簿の責務遂行を支援する、書き換え、消去が不可能なストレージサービス「Regulatory Records Retention(R3)」、(2)証券会社の保存データ、文書、その他の記録をより有効に活用できるブラウザベースの管理ツール「QUERY」、(3)FinQloudの基盤を通じてAWSに直接アクセスするFinQloudクライアント「AWS Web Services」――という3つを提供している。

 現在、同サービスは日本では提供されていないが、銀行を含め金融業界の26社がサービスを利用している。

 「FinQloudはAWSの協力で開発できた。これはAWS側も金融業界への売り込みが必要と感じていたこと、われわれも提供するサービスは最も低コストで提供したいと感じていたことから、お互いの思惑が合致して協力することが決定した。クラウドサービスの中にはクローズな環境で提供されているものもあるが、AWSはオープンな環境でメーカーのテクノロジと組み合わせて利用できる点も金融業界のユーザーにとってメリットとなるものだと考えた」(Honore氏)

 NASDAQ OMXではFinQloudを採用することで「現状を打破して、ITインフラにかかっているコストを半分にすること、企業がイノベーションに注力する体制を取れるよう支援すること、ストレージとデータの有効活用の支援という3点の実現に結びつけて欲しい」とアピールする。

 AWSが提供するアーカイブ、バックアップ用ストレージ「Glacier」のようなアーカイブにデータを保存することで「時折、データを消してしまえ! といった間違った選択が行われることがあるが、アーカイブを持つことでそういった問題を回避することもできる」とクラウド活用が間違った運用を是正する効果を生むことがあるともアピールする。

 データのセキュリティについても、「R3ではAWSにデータを保存する前にデータを暗号化し、AWSへは暗号化した状態でデータを保存する。われわれとAWSの間は専用線で結んでやり取りしている」と対策を取っている。

 今後マーケットプレイスなど新しいサービスの提供も予定し、「現在、日本ではサービスを提供していないが、将来的には日本でもサービスを提供していくことができればと考えている」という。

 最後にHonore氏は「ここ数年、コストをいかに削減するべきかという課題に取り組んできた企業が多い。しかし、本来はコスト削減にとどまらず、いかに売上増加を実現するべきかを考えなければならない。われわれのサービスは売り上げを増加させるイノベーションに挑戦するものとしても利用することができる」と訴えた。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
IT部門の苦悩
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
より賢く活用するためのOSS最新動向
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算