かのドラッカーが「経営の哲学」で引用していましたが、古代ローマに「野獣の原則」という言葉があります。『自らが与える影響について責任をとるべきことは、太古からの法的原則である。自らの過誤によるものか、怠慢によるものかは関係ない。この原則を最初に明らかにしたローマの法律家たちは、これを野獣の原則と名づけた。ライオンが檻から出れば、責任は飼い主にある。不注意によって檻が開いたのか、地震で鍵が外れたのかは関係ない。ライオンが狂暴であることは避けられない。』
企業や組織の活動が社会に与える影響には、活動そのものによる影響と、その活動によって副次的に生じる影響がありますが、いずれも企業や組織の活動による結果であることに違いはありません。従って、いずれの場合もその責を負うのはその組織の義務である、という話ですね。
カギは、迅速な決断と誠実さ
不幸にして情報漏えい事件が起きてしまった場合、当事者の組織が果たすべき責任は、ざっくり言って上記の通りです。ただ、こうしたセンシティブなテーマについて対応を行う場合、「何を」すべきかはもちろんとても重要なのですが、それ以上に「どのように」という部分に留意すべきだと私は思います。
その場で食べるとしたら、さも面倒くさそうに「欲しいんだろ? 」と投げ渡された高級チョコよりも、さわやかな笑顔で「君、チョコ好きだったよね?」と手渡された安物チョコの方が「おいしく」頂けませんか? 相手の目にどう映るかという部分で、仮に同じような行動だったとしても評価は180度変わる、という例なのですが、いかがでしょうか。
つまるところ、情報漏えいを起こしてしまった企業がその責任を果たす上で大きなウェイトを占めるのは
- 意思決定や行動の『速さ』
- 被害者や社会に向けた『真摯な対応』
この2点に留意すること、となるでしょうか。ただ果たすべき責任を果たすことにのみ神経をとがらせるだけでなく、こうした部分も心に留めておいて頂ければと思います。
- 中山貴禎
- トヨタや大手広告代理店など、さまざまな業界を渡り歩き、2010年1月よりネットエージェント取締役。機密情報外部流出対策製品のPM兼務。クラウド関連特許取得、米SANSにてトレーニング受講等、実務においても精力的に活動。
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