電気信号のやり取りを光に換えることでどんなメリットを得られるか? 答えは“より速くなる”だ――。
ネットワンシステムズは9月27日、イスラエルのCompass Electro-Optical Systems(Compass-EOS)と国内初の販売代理店契約を締結した。“シリコンフォトニクス”技術を搭載した小型のハイエンドルータ「r10004」を販売する。
シリコンフォトニクスは、半導体上に光回路を取り入れ集積する技術。Compass-EOSが商用化したシリコンフォトニクス技術「icPhotonics」は、同社が新たに開発したシリコンチップ同士を直接光ファイバで接続することで、ルータ内のモジュール間は光で通信し、通信速度を向上できるという。
今回のシリコンチップは、レーザー発光器と受光器を配置しており、168個のレーザー光を扱うことができる。それぞれの帯域幅は8Gbpsであり、全体では1.34Tbpsとなる。チップ相互間はフルメッシュ接続される。
従来型の電子回路では、高周波数になるほど電気信号の減衰が多くなり、ノイズや干渉、熱の問題から、転送速度の向上が頭打ちになるという課題があった。転送速度を上げれば上げるほど、転送距離が短くなってしまい、アンプなどを使わなければ、数センチ程度となる。一方、光で通信する今回の技術では、200mの転送距離が可能であることを検証しているという。
r10004は、高さ6RU(26.67cm)でシステム容量が800Gbps、消費電力が平均3.0kW。同社によれば、この製品はラインカード間の通信を従来の電子回路での通信から光回路での通信へと置き換え、ラインカード間を光ファイバで直接接続することで、通信速度を大幅に向上させるという。
Compass-EOS CEO Gadi Bahat氏
Compass-EOS マーケティング担当バイスプレジデント Asaf Somekh氏
ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ担当 執行役員 篠浦文彦氏
加えて、ミッドプレーンやスイッチングファブリックが不要になり、機器のサイズを大幅に小さくしたとする。ミッドプレーンやスイッチングファブリックをなくし、消費電力が少なくてすむ光回路での通信に置き換えることで、電力消費量を大幅に削減した。搭載可能なラインカードは、10Gigabit Ethernet(GbE)×20と100GbE×2。価格は未定だが、同等製品の2分1~3分の1程度となる見通しだ。
Compass-EOS 最高経営責任者(CEO)のGadi Bahat氏は「近年、スマートフォンの普及や動画データの増大などにより、データ通信量は急激に拡大している。サービスプロバイダーなど事業者はインフラ増強を迫られているが、市場動向をみると、データサービスの収益は横ばいであり、事業者側はコスト抑制と通信能力向上の両立ができれば理想的、と考えている。特に日本では、電力と設置面積の課題は大きい。シリコンフォトニクス技術を活用すれば、省スペースと省電力を実現できる」と述べ、同技術の優位性を強調した。米国の大手ケーブル通信事業者の事例では、3ラックのルータクラスタを1台のr10004に集約し、空いたスペースにデータベースサーバを増設したという。
Compass-EOS マーケティング担当バイスプレジデントのAsaf Somekh氏は「80~90年代には、データセンターの中心はメインフレームであり、稼働率は高くなかった。しかし今や、x86サーバが主流となり、柔軟性が高くなり、効率性が上がった。ネットワークの領域でも同じようになるべきではないか。いわばx86サーバのようなルータが求められる」と語り、r10004はこのような期待に応えるものであるとの考えを示した。
同社は今後、さらに高速化と機能拡充をしていく意向で、レーザー光の速度を向上させ、マトリックスも増やし「現行1.34Tbpsの帯域幅を10Tbpsにすることもできる」(Somekh氏)見通しだ。
ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ担当 執行役員の篠浦文彦氏は「シリコンフォトニクス技術は、従来の通信の発想の延長線上にはないもの。これを活用したルータは、これまで以上の帯域幅、省スペース性、省電力を実現できる」と語った。