オープンデータを推進するためには、さまざまな制度設計が必要になる。大きなものを挙げれば、データ形式とライセンスだ。データ形式については、単に紙をスキャンしたものから外部のさまざまなデータと連携できる「リンクトデータ(LOD)」まで、さまざまな段階がある。また、ライセンスも「クリエイティブ・コモンズ」などが提案されているが、各行政機関の事情などを勘案したものになる。また、。前回解説したパーソナルデータの問題もある。
オープンデータの5つの段階 出典:「平成25年版情報通信白書」(総務省)、原出典:電子行政オープンデータ実務者会議 第1回データWG 資料7(小池データWG主査代理提出資料)
いずれにせよ、すべてを一気に理想形にすることは難しいため、さまざまな方法が提案されており、「電子行政オープンデータ実務者会議」「オープンデータ流通推進コンソーシアム」などで制度から活用までを広い範囲の有識者が議論を続けている。
現在、実際にオープンデータに関する試みが始まっている。総務省統計局では、統計サイト「e-Stat」で国勢調査、経済センサスなどを試験的にAPIとして公開している。
また、一般のエンジニアなどを集めてデータの活用アイディアや、プロトタイプを2日などの短期間で作る「ハッカソン」のような、従来行政がやらなかったような方法もとられている。「気象データハッカソン」では、気象庁のデータから体質に合ったアドバイスをするアプリなどが発表された。このほか、民間での先進的な試みを「勝手表彰」するなど、データの活用のアイディアはまさに民間の市民や企業が持っているという方針から、新しい試みが次々と実施されている。鯖江市や横浜市などの自治体でも取り組みが始まっている。
「気象データ アイデアソン・ハッカソンの例」 出典:「平成25年版情報通信白書」(総務省)原出典:オープンデータ流通推進コンソーシアム事務局作成資料
オープンデータの取り組みは海外で進んでいる。米国では、オバマ大統領がオープンガバメントを推進しており、ポータルサイト「Data.gov」で積極的にデータやアプリを公開している。電子政府戦略そのものの中心にもオープンデータが置かれており、基本的に機械で読めるデータをすべて公開するポリシーをとっている。英国などのEU諸国でもオープンデータの取り組みは進んでいる。
ICTを利用した社会的課題の解決
社会的課題の解決にあたって、さまざまなICTが活用されている。例えば、地域の問題に対しては街づくりのためにスマートタウンの導入が検討されている。また、インフラの整備や最適化にもICTの役割がさらに増している。ICTが生活にとって重要になるにつれて、高齢者とICTの関わりも大きく変わってきた。このような取り組みについて解説する。
街づくりとICT
東日本大震災などの経験から、災害対策や地域コミュニティの再生、地域活性化などの課題をICTで解決しようという「ICTスマートタウン」の試みが始まり、実証プロジェクトが実施されている。また、あらゆるものをIDで管理する共通プラットフォームなどが見当されている。
柏市では、エネルギー・健康・防災の共通統合プラットフォームの構築が提案され、省エネや健康相談、避難経路などの提供を目指している。また、三鷹市ではWiFiネットワークや情報伝達システムなどで災害時や平時の要援護者の支援、イベント情報などの配信を行いコミュニティの創生を目指している。袋井市では、災害時の物資供給にICTが活用される。支援物資や地区特産品を効率的に輸送したり、農家と地域の交流など、農を生かしたまちづくりを目指している。
「柏の葉スマートシティにおけるエネルギー・健康・防災の共通統合プラットフォームの構築(千葉県柏市)のイメージ図」 出典:「平成25年版情報通信白書」(総務省)、原出典:総務省「ICT街づくり推進会議」(第1回)資料より作成
海外では、欧州でCity SDKというオープンデータも活用した街づくりプロジェクトが進行している。市民と行政との連携のための問題通報システムや、最適な移動や近隣の店舗情報などを活用した、アプリケーションを開発できる環境の実証が進められている。