情シスが変えるマーケティング

マーケティングがITに依存する時代--鍵を握るのは情報システム部門 - (page 2)

井浦知久(ユラス)

2013-10-15 07:30

 こうしたデジタルマーケティングの動向の中でもとりわけ注目したいのは、アドテクノロジと呼ばれる広告分野でのIT化の動きです。みなさんはオーディエンスターゲティングあるいはリアルタイムビディング(Real Time Bidding:RTB)という言葉をご存知でしょうか。いずれも、今デジタル広告の世界で注目されているアドテクノロジを支える技術です。

 オーディエンスターゲティング広告とは、広告を出す媒体(ウェブサイト)をあらかじめ指定する従来型の広告とは異なり、ウェブサイトは無関係に、ターゲットとなる「人」に対して直接広告を打つ手法です。

 従来のバナー広告では、たとえばYahoo! Japanやオールアバウトなどのウェブサイトの広告枠を直接買い付けて広告を出していました。TV広告なども同様に、放映する時間帯とプログラムから広告の価値を決定して広告主に対して広告枠を売るような手法をとっています。

 しかしながら、この方式は必ずしも効率のよいものではありません。例えばベビー用品の広告を打ちたい場合に、番組の視聴者に乳児がいる家庭もあれば、そうでない家庭もいるからです。購買の可能性の低い視聴者に対しても、“刺さらない”広告を高いお金をかけて打っていることになります。

 そうであるなら、あらかじめ「乳児のいる人」を特定しておいて、その人に対してだけ広告を打つことができれば、コンバージョン(成約)に至る確率が飛躍的に高まります。

 このように「人」に対して直接広告を配信する技術をオーディエンスターゲティング広告と呼びます。もはや特定の媒体(ウェブサイト)に依存する必要はなく、どのサイトであってもターゲットとなる人が訪問すれば、そこへ広告を出せば良いのです。はるかに効率的ですね。

 もう1つのRTBという手法は、広告配信のある媒体と広告主間で、文字通りリアルタイムに広告の競争入札をする仕組みです。

 みなさんは、あるサイトのリンクをクリックして、そのページが表示される瞬間に、バナー広告をオークションしていることを想像できるでしょうか。このゼロコンマ何秒という間に、媒体側は複数の広告の中から、最も高い値を付けた広告を1つだけ選んで表示しているのです。媒体側と広告主側には、それぞれSSP(Supply Side Platform)、DSP(Demand Side Platform)というシステムが存在し、両者の間で自動入札が行われています。ちょうど、株の売買が人手を介さずにコンピュータ間で取引されることに似ています。

 しかもRTBで応札する広告は、先に説明したオーディエンスターゲティング広告ですから、視聴者に適した広告が選ばれて表示されるのです。このようにアドテクノロジは、かつては存在しなかった手法や領域を開拓しながら、驚異的に進化しています。

 広告以外にも革新的なマーケティング手法がいくつもあります。例えば、顧客をベースにしたオウンドメディア(自社ウエブサイト)マーケティングのアプローチにおいては、O2O型のマーケティング施策を実施して、会員との直接的な関係を深化させています。あるいは、ユーザからの反応の違いによって施策をリアルタイムに変更できるシナリオ機能とECを組み合わせることでダイレクトマーケティングを強化する手法などもあります。これらは、広告を使わずに自社のサイトだけで完結できる新たな技術です。

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