情シスが変えるマーケティング

マーケティングがITに依存する時代--鍵を握るのは情報システム部門 - (page 3)

井浦知久(ユラス)

2013-10-15 07:30

 こうした例から明らかなのは、マーケティングがITに強く依存しつつあるということです。もはやICT技術の進化にキャッチアップできなければ、マーケターとして生き残れないのではないか、そう思わせるところまで来ています。そして企業におけるITの専門集団と言えば、他ならぬ情報システム部門です。

 筆者は、長年CRMベースの企業システムを提供する会社を経営してきました。CRMの導入に際しては、そのオーナーであるマーケティング部門の担当者とやりとりすることになりますが、社内システムとの連携や技術的に深い話になるとIT部門の担当者が参加してきます。

 社内システムに精通していて、かつ外部技術を正当に評価できるのは長年ITの研鑽を積んだIT部門でなければ難しいからです。門外漢がにわか仕込みにITの知識をかじったところで、一朝一夕にこうした技術を身につけることはできないでしょう。つまり、これからのデジタルマーケティングの時代においてはますますIT部門の技術や知見が必要とされ、マーケティング部門とIT部門の協調が求められるのです。

 ビッグデータは、まさにその好例です。ビッグデータにはデータの蓄積、分析、利用という3つの柱がありますが、膨大で多様なフォーマットのデータを「蓄積」する役はIT部門、ビジネスでの「利用」を企画するのはマーケティング部門が担当するのが一般的です。そして「分析」においては、両部門の境界にあって、両者の豊富な知見が必要とされるためITとマーケティングの両方のイディオムに精通するデータサイエンティストが担うことなるのです。

 このように、マーケティング部門とIT部門の関係強化が企業の将来にとって重要な鍵を握ることになるでしょう。見方を変えれば、最高情報責任者(CIO)やITマネージャにとっては、IT部門を自社システムのお守り中心のコストセンター(コスト部門)から脱却して、ベネフィットセンター(収益部門)へと転換させる大きなチャンスが横たわっているとも言えます。

 このシリーズでは、次回以降もデジタルマーケティングにおける技術やトピックスにフォーカスして、ITとマーケティングの接点についてお話していく予定です。

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井浦知久
東京生まれ。東北大学理学部中退。 1980年代から人工知能プログラミングを通じてインターネットやUNIXに精通する。1997年にインターネットサービスの専業会社ユラスを設立。2010年にオウンドメディアプラットフォーム「MA3」を企業向けに提供開始。日本マクドナルド、シスコシステムズ、カルチュア・コンビニエンス・クラブなどの有力企業への豊富なサービス提供実績を持つ。著書に『オウンドメディアマーケティング』がある。

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