例えば、「電波利用料」の話題だけでもなかなか興味深い。携帯電話の事業者と放送事業者とで、単位周波数当たりの電波利用料を比べてみるだけでも、いかに「放送」が利権の固まりであるかわかるであろう。
とはいえ、前述したとおりテレビの視聴率は落ちてきており、将来的にこれまで通りの利益を享受することが困難になっているのは避けがたい事実である。
このように放送事業者が産業構造上「ゆでカエル」化するのを横目に、通信事業者は着々と放送を「取り込む」動きを見せている。NTTドコモのdビデオ、KDDIのKDDI smart TV BOXは、通信事業者が放送の領域に踏み込んでいる代表的な事例である。この他、ドコモがTBSに出資したりと通信事業者の動きから目が離せない。
また、携帯端末の世界シェア1位を誇るSamsungがBoxee(イスラエルのビデオストリーミング機器を開発しているベンチャー)を買収したことは、地味ながら気になるニュースである。通信事業者のみならず、世界一の携帯端末メーカーも通信を視野に次なる展開を考えているのである。
だが、通信事業者の放送事業へのアプローチにキレを感じない。
皆さんは、NOTTV騒ぎを憶えていらっしゃるだろうか。あるいは、mmbiとメディアフローの戦いという言い方の方が適切かもしれない。mmbiとはNOTTVの提供事業会社(実際には、さらに間にジャパン・モバイルキャスティングという会社がある)でありドコモ系列の会社、メディアフローとはKDDI系の会社だった。