HEMSを100世帯に設置 電力の見える化で3割の省エネ
一方の需要側では、今年3月に市内100世帯に無償で提供された家庭エネルギー管理システム(Home Energy Management System:HEMS)が動き始めた。その目的は、電力消費を見える化して節電意識を高め、さらに省エネの効果を上げること。この事業のプランニングから参画し、プロジェクト全体管理を担うアクセンチュアの福島イノベーションセンター センター長の中村彰二朗氏は「電力の見える化により、3割程度の電力消費削減効果が生まれています」と言う。
参加者はPCやスマートフォンを通じて、時間や日、月という単位で電力消費量を見ることができる。この実証実験は一般家庭が主たる対象だが、事業所も加わっている。その1つ、会津東山温泉で2つの旅館を経営するくつろぎ宿社長の深田智之氏は「電力の見える化により、契約基本料金を下げられる可能性が出てくる」と期待する。従量の電気料金を下げることも重要だが、契約したアンペア数を減らせば、さらに大きな効果を得ることができる。さらに、深田氏は今後の課題をこう説明する。
「お客様がいつ来てもいいように、通常、部屋の空調はつけっぱなしにしています。これをお客様に合わせてコントロールできれば、大きなメリットがあると思います」
今のところは100世帯が対象だが、今後は広域でのHEMS展開も視野に入っている。また、デマンドレスポンスへの拡張という可能性もある。
スマートタップを利用すれば、タップごとのオンとオフができる。電力消費のピーク時に中央からの遠隔操作で、あらかじめ同意を得たユーザーの登録した家電だけをオフにするというやり方だ。例えば、空調や冷蔵庫のように、短時間オフにしても生活にはさほど影響のない家電もある。もちろん、そのためにはHEMSに対応するスマート家電がある程度普及している必要がある。
こうした将来像を実現するために克服すべき課題は多い。多くの補助事業に共通することだが、政府の予算でスタートした事業を持続的なものにするのは容易なことではない。また、発送電分離を含めた電力システム改革の行方にも、スマートグリッド事業は影響を受ける。
会津若松市のスマートシティに参画する産官学の関係者たちは、走りながら考え議論を重ねている。次回以降で、そのプロセスを詳しくたどってみたい。
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